学徒防衛戦⑥
地響きの直前、本館屋上。強烈な衝撃波によって生じた土煙の中に人影。春風が横から吹き荒れ、相対する鏑木はその姿を見て驚愕した。
「ふむ、悪くナイ。身体の芯を突く良き技ダ」
「……山脈を貫通する威力なんだけど」
「言うに及ばず」
《
傷ついてなお、平然としている凛風は土埃のついた衣服を払うと首筋に手を当て、コキッと音を鳴らした。
「さすがに自信無くしちゃうなぁ……他の客人も君と同レベルなのかい?」
「いや、アイツ等はオマエよりも圧倒的に弱い」
「そうかい……それは良かっ────」
次の瞬間、安堵にも似たため息を吐いた鏑木の視界に数個の小石が飛んでくる。瓦礫片のようなそれは内側から眩い光を放った。
「ッ!?」
突然の飛来物に対し鏑木は反射的に身を躱す。その直後、物体は膨張し弾けた。そして殺意の無い攻撃に驚く鏑木とは対象的に、凛風はその合図を見て現状を完璧に理解した。
「確かに奴らは弱い。それでも、確実に殺すための法を授けておいタ。巻き込まれる者には悪いがナ」
その言葉を聞いた瞬間、鏑木は大粒の汗をかいた。通常の物質に特殊な
(物体を爆破、爆弾化する能力。その威力を決定する要因がもしも、質量に依存するのなら……)
凛風の言動から推測される最悪の展開は────と鏑木は対象選択を行わず、素早く印を結び能力を発動させた。
一方その頃、心配の矢先であるドレッドは空を見上げていた。見下ろす夏目に腹を踏まれ、口から大量の血がダラダラと垂れ出ていた。
「奥の手って何?」
「ごふっ……オレの『
ヒュー、ヒュー、と虫の息で言葉を紡ぐ。夏目は反撃などさせぬように細心の注意を払い、情報を聞き出す。
「つまり何が言いたいの……?」
踏み締めた足の力を強め要件を催促する。苦痛の表情で唸るドレッドは更に吐血を繰り返した。
「ふぐッ……つまりはよぉ……この建物ごと能力を付与したってことさ……」
「は?」
焦り、その言葉の意味を身をもって体験していた夏目はすぐさま拳を握りしめ、とどめを刺そうと構えた。がしかし、ドレッドは途端に不敵な笑みを浮かべた。
「おっとぉ、止めようとしても無駄だぜ……? オレが死んだ瞬間、起爆スイッチは押される」
「………ッ」
「そして更に残念、お前が手を出さずともよぉ……オレはもうじき死ぬ」
ドレッドの呼吸が徐々に浅くなっていく。夏目はその様子を見ていることしか出来ず、唇をかみ締める。
虚ろな瞳孔に悔しがる姿が映る。ドレッドはいい土産が出来たと目尻を細め、鬼の女に皮肉を送った。
「次は"地獄"でまた殺ろう────────」
次の瞬間、『学校』敷地内の全てが輝きを放ち、火花と爆風を辺り一帯へと撒き散らした。
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