突然変異②

「イヒヒww ほんとに混ざっててウケるw」

〚なんだコイツ?〛

「人の体で爆笑しないでください」


 先日に起きた死亡事件の経緯を説明していた師人は理解わかりやすいように、身体からカルトを出して見せていた。そして茶化されていた。


「あのー……結局この方はどういう……?」

「あっ、自己紹介がまだだったね。私はひいらぎ優花ゆうか。師人の先輩であり憧れの存在かな」

「違います」


 飄々ひょうひょうとしている柊はツッコミを意に介さず、話を続ける。


「それでえーと、清水……」

羽依ういです」

「羽依ちゃん! 写真で見るよりカワイイね〜!」

「あ、ちょっ! アハハハハハ!!」


 白い歯を見せながら抱きつかれ、意志とは関係なく大きく口を開けて笑う清水。また無限ループが始まった……と師人は頭を抱えた。そしてそんな賑やかな一室に、更なる来訪者が現れる。


「ちゃーっす……ん?? えッ!? あねさん!?」

「ん? おおッひびきー! 久しぶり〜!!」

あねさんいつ帰ってきたんすか!? 水臭いわ〜、連絡してよー」

「いやいや、今日帰るって送ってるでしょ」

「あれ? ほんまに?」


 柊は気がつくと清水を離して相良に近づく。携帯を取り出し画面を覗く二人は、またワチャワチャと話しこみ始める。その様子にそそくさと清水は伺う。


「先輩先輩」

「ん、ああ。俺と相良はペーペーの頃から柊さんに世話になっててな」


 A級職員の柊は年齢は若いがベテランであり、一年以上前に相良と師人、二人の世話役をしていた。

 つい最近まで移動装置ワープゲートが届かない遠方へ単独任務にあたっていたため、新人の清水とは面識が無いが上司イヴから話を聞いていたのだろう。


「あの人、気に入った奴にはグイグイくるから慣れた方が早いぞ」

「……滅茶苦茶いい匂いがしたっす」


 

「で、みんな何で訓練室ココに集まってるの?」

「相良は俺が力試しで呼びました」

「私は修行と見物っす」


 寄生した宿主を強化するトランス星人カルトの特性を確認するため、相良を呼んだ師人。柊が視線を送ると相良は久しぶりだから楽しみや、と頷いた。


「いいね〜! それじゃあタイマンで勝った方には優しい先輩がラーメンを奢っちゃろう」

「え〜〜ラーメン? 俺たち社会人っすよ?」

「ほんまやで、ワイら小学生とちゃうで姐さん」

「え……? いらないの?」


 意外な返答に柊はキョトンと寂しそうに聞き返す。その様子に相良と師人は顔を合わせ、少し間を置くとその質問に答えた。


「チャーシュートッピングでお願いします」

「ゴミと借金以外はなんでも貰いまっせ、姐さん」

「うんうん、二人共素直で可愛いね!」

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