第26話 たまに一発で地雷踏む先生いるよね

「またか……まあそうだろうな」


 通算何回目か忘れた魔力の爆発を見てため息をつく。


 Sクラスに選ばれた俺たちに暇な時間はなく剣術の授業が終了してすぐ魔法の授業が始まっていた。

 初回は魔力制御だ。魔法を適切な威力で発動するためには必須の技術。初回にふさわしい単元だろう。


「魔力が多い証拠じゃないですか。まあ、脳筋に変わりはないですけど。『自爆』魔法ですし」

「防御重視の脳筋とか意味わからないだろ」


 自然とグループになっているシュヴァリエと軽口をたたきながらもう一度手のひらに魔力を籠める。


 全身から血流と共に温かいエネルギーの奔流が手のひらに集まっていくのを感じる。

 慎重に慎重に絞り出すように魔力を一点に収束させていく。

 が、またもや手品でハットからハトが出てきたときのような気の抜けた音と共に爆発した。


「まるで魔法の狂戦士ね」


 こちらも自然と同じグループにいたリーナが呆れたようにつぶやいた。


 なんで二人とも俺に理性がないみたいに思ってんのかなぁ!?

 どちらかというと考えてんだけどなぁ!?


『いや、お前は頭がよくない。回転は速いがな』


 今出てくるんじゃないよ!! 


「考えてから動いてるはずなんだけどな……。まあでも制御ができないなら仕方──なくはないな」


 もう一度手のひらに力を込めていると、我慢がならなかったのか先生が浮かない顔で近づいてきた。

 学園の教員養成服にローブといういかにもな恰好をした中年の女性がこの授業の先生だ。


 生徒の評判は……考えないでおくか。


「レグルスくん。あまりうまくいかないようだったら似た境遇の人に教えてもらうのはどうかしら? ほら、同じ魔力量だったらレイト君とかはどう?」


 こいつ、一発で地雷踏み抜きやがった……!


 自身の名前が挙がったのを聞きつけたレイトがニヤニヤと見下したような笑みで肩を組んできた。


「なんだよ? お前俺に教わらないとできないのかよ? ったく剣術だけじゃなく魔法までも雑魚でよくこの学園に入ったよなぁ? いいぜ俺がスパルタで教えてやるよぉ」

「あんたに頼んだとは一言も言っていない」

「ただし、王女様も剣姫もよこせ」


 そう小声でささやくレイトの顔はオークやゴブリン以下の下卑た笑みを張り付けている。


 こいつ、下半身にしか脳がつながってないんじゃないか? じゃないとこんな性欲馬鹿にはならんだろ。


「練習の邪魔だから早くどいてくんない? シュヴァリエたちに報告してただでさえ低いお前の好感度をさらに下げてやろうか?」

「んだとてめぇ!! クソが!!」


 俺の安い挑発にまんまと引っかかったレイトは激昂すると俺の顔面を掴み魔力を爆発させる。

 ありったけの魔力をぶつけて満足したのかそのまま自分のグループへ戻っていった。

 そしてなぜか取り巻き連中から褒められている。なぜか、褒められていた。


「ったく俺じゃなかったら死んでたぞ今の」


 頭の具合を確かめるように横に何度か首を振る。

 人間一人一人の魔力の周波数が違うため、他人の魔力を直接受けるだけでも致命的なダメージになるらしい。

 交流専用の機器に直流を流し込んで壊れるみたいなことだ。


 ちなみに先生は目の前で殺人的な魔力が放たれてもおろおろするだけでただ突っ立ているだけだった。


「レグルスさん!! なんなんですかあいつは!」

「人生楽しそうな奴……いや忘れてくれ」


 なんかその言い方は負けたニュアンスが出てて嫌だな。

 皮肉るなら盛大に、だな。


「それにしても面白い身体ね。あんなに魔力を食らったのに無傷だなんて」


 塵の一つも見逃さないというようにリーナは俺の身体をじっくりと観察し始めてしまった。


 あの、実際は死んでますハイ。


「リーナ? さすがに近すぎるのでは……?」

「そうね。もうじっくり見れたことだし、シュヴァリエに返すわ」

「えっ!? か、返すってそんな……私の者じゃないですし!」


 わたわたと意味のない言い訳を連ねているシュヴァリエには目もくれず彼女は続ける。


「それに、面白い発見もあったしね」


 ふふっ、とリーナが先生よりも何倍も魔女らしい微笑みを浮かべる。


「彼の魔力、出力の仕方がシュヴァリエ、いえフォーマルハウト家の癖があるのね」


──────────────────────────────────────


【あとがき】


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