元不良のオタク陰キャは歌姫のお気に入りらしい。

長月零斗

part Prologue〜源となる物語〜


俺は、純粋すぎた。


だからこそねじ曲がった。


俺はヒーローになりたかっただけだったんだ。


おれは、何時から、闇に堕ちたのだろうか?




「なあ、神無月。」

「ん?なんだ??」

昼休みのとある教室で、俺はクラスの友達。裕也から話しかけられていた。

「お前さ、前に喧嘩には自信があるって言ってたよな?」

「ああ、言ってたな。まあ、親がいろいろやってて、それを教えてもらってるって感じだけどさ」

裕也は「だったら」とにやけながらこう言った。

「なあ、神無月。俺らと一緒にさ、戦わないか?」

いきなりの誘いで、俺は何が何だかわからなかった。

「いや待て待て、まずは説明してくれないと何が何だか俺もわかんないから。」


「ああ、すまない」

俺の困惑に対して困った表情を浮かべた裕也は、何やら紙に勢力図?のようなものを書き記し、説明を始めた。

「俺ら、学生グループみたいなのを作って活動してるんだよ。だけど最近、俺らに難癖付けてくる隣地区のグループが調子乗りやがってるから、しばきに行くってわけ。」

成程、つまりは不良グループ同士の抗争ってわけだ。

「行かない」

「なんで!?」

俺の即決断に悲痛の言葉を漏らした裕也。俺はそれに続けて淡々と言葉を連ねる。

「第一、そんなよくわからん喧嘩に行って事件に巻き込まれたり、怪我したらたまったもんじゃない。それに難癖付けられるようなことをお前らがやったんじゃないのか?とにかく俺はこのことについては知らない」

「俺らは難癖付けられるようなことをやった覚えはないぜ?お前の力が必要なんだよ!頼む!」

友達に頭を深々と下げられ、俺は断り切れなかった。

「わかったよ、何時それがあるか教えてもらえるか?」

「協力してくれるのか!?ありがてぇ、詳しい場所と作戦に関してはおいおい連絡するよ」

ウキウキしながら顔を上げた裕也に、俺は半分呆れのような感情を抱きつつも、もうここまで来たんなら腹をくくるしかないと、自身に言い聞かせるのだった。



当日。

その公園には多数の人間が集まっていた。

にぎやかな生徒たちの声。隣町の中学からも来ている生徒がいることから、裕也が所属する組織の規模の大きさがくみ取れるところである。

しかし、会話の内容はどれも物騒なものだった。

「よう、お前が助っ人できてくれた裕也と同じクラスの奴か、働きを期待してるぜ」

がたいのいい先輩や同年代に囲まれ、そんな声をかけられていた俺は、

「は、はぁ」

と、肩をすくめて質問に受け答えすることしかできなかった。

すると、ぞろぞろと公園に他校の生徒らしき人物たちが集まり始める。

「お出ましか」

周りにいる先輩や裕也のその一言で、場に一瞬にして戦慄が走る。


「よお、あんたら、ここは俺らの縄張りだって前から言ってるよなあ?」


「なに?中坊の分際で、俺らをなめてくれちゃってるわけ?笑えるわ」


先頭にいたリーダー格らしき2人が、その集団から、姿を現した。

煽りともとれるその言動に対し、先輩たちが反撃の言葉をぶつける。


「あんたらこそ、ここは先代リーダーから承った場所だ。ここから失せろ」


その一言に、顔をゆがめた先頭の2人。


「なら仕方ねえな、まあ、俺らはなっから交渉なんざつまらねえままごとをしに来たつもりじゃアないんでな、お前ら、やれ」

先頭の2人が合図を出すと、何やら後ろの集団がバッドやら太めの木の板などで武装し始める。

(いや、何時の時代だよ。)

俺はそう脳内で突っ込みを入れつつも、現代にもこういうことってあるんだな。と関心を現しながら目の前の集団に向かい身構えた。


確実に衝突が起きる。そんなピリピリした空気の中、相手の先頭の2人が雄たけびを上げながら突撃してきたことで、衝突が始まった。


相手のこぶしが迫りくる。


衝突開始から、俺は3人の敵を相手に圧倒していた。

俺は正面の相手の拳をかわしつつ、カウンターで腹に膝蹴りをお見舞いする。

そのカウンターが決まると同時にがすんっという鈍い音が鳴り響き、うめき声をあげながら、倒れこむ敵。

後ろから2つの足音が迫っていることも察知した俺は、一度姿勢を落とし、身をかがめる。

すると、相手は狙っていた俺の姿勢がいきなり変わったことで、狙っている拳と構えのバランスが大きく崩れ、勢い余って転倒した。

このすきを逃すはずがない。俺はかかと落としを食らわせ、立てないようにとどめを刺した。


こんな戦闘を続けていると、やがて敵は戦意を喪失し、敗走を始めた。

どうやら、先ほどの先輩が2対1の戦いを制し、敵のリーダー格を撃破したらしい。

この戦いで、こちらも敵も多数の負傷者を出した。

俺自身もこの戦いで、他人を殴り、12人近い敵に傷を負わせたのもまた事実だ。


しかしなんだろう、すべてが終わった後のその公園には、倒れている仲間を救護したり、支え合ったりしている。

そして、何より、飛び入り参加の俺に、英雄としてファンファーレを送ってくれる味方の存在が、俺をそう決意させた。


「この組織で、これから活躍しようと」


かつてダークヒーローにあこがれた俺は、この組織のダークヒーローになることに決めたのである。


そこから、俺はその地域で、一大勢力である組織をまとめる存在になったのだ。


しかし彼はまだ知らない、それ自体が大きな過ちだということを。

人を傷つけて得る正義を、見直す機会が与えられるということを。

彼は、いや、彼らはまだ知らなかった。


ここまでは、過去の物語。

語られる、一部の物語。

ここが、彼の原点オリジンである。


あとがき

懲りずに新シリーズを始めてしまいました。どうも、長月零斗ことReitoです。と言うか皆さんお久しぶりです。最近忙しすぎて全く小説を書けておりませんでした。申し訳ない。Vの方は明日更新になります。さて、新シリーズの話を。

今回の主人公は、ダークヒーローに憧れた純粋「だった」青年。今話されたのは彼の過去。つまり、彼の中学時代の話です。さて、お次は高校。つまり現代のことが話されます。今作のヒロインや個性豊かなクラスメイトたちが出てくるので、皆さんお楽しみに、それではまた次回お会い致しましょう!Good by!!

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元不良のオタク陰キャは歌姫のお気に入りらしい。 長月零斗 @Reito21331

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