見世物小屋と見世物

高黄森哉

画面


 俺は驚いた。それは電車に乗っているときであった。空間が四角く切り取られて、その場所から目が見えたのだ。一瞬の出来事であった。


 周囲を確認する。


 目と空間を見たのは俺だけのようで、誰も騒いだりしていない。いや、それとも皆、俺と同じように無視しているのだろうか。


 目はなにを見ていたんだ。俺ではなかった。すると、俺の右隣で寝ている少女だろうか。彼女の胸は奇形と呼べるほど巨大だ。


 俺は駅から降りて会社を目指す。ビルが立ち並ぶ道、通路沿いを進む。桜が植わっていて白い花を咲かせている。だしぬけに、ぴしゃりと銃声のような反響がした。


 目の前に赤い花が咲いた。人が降って来たからだ。人はまるで非常口のピクトグラムみたいな体勢で死んでいる。スカートがめくれ白い下着が見える。


 すると、周囲に沢山の暗い四角が現れた。沢山の目が、その穴から死体をのぞき見している。好奇心や性欲の眼差しを持って。


 一つの穴を近づいて覗き返す。中は映画館になっていて実に多様な人間が座っている。そいつらは俺に、指を差したり、見えないぞと、ヤジを飛ばしたりする。


 館内には、自慰行為に耽る豚顔女子高生や、画面を見て笑う不登校児、独り身の老人、枯れた中年の主婦、薄給のサラリーマンなどがいた。

 

 まるで見世物小屋だ、と思い、俺はその様子を記録するべく、カバンからスマホをさっと取り出す。


 気が付くと俺は映画館の真ん中に座っていた。

 

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見世物小屋と見世物 高黄森哉 @kamikawa2001

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