第二十二話 花鈴の兵法
「『密告』の全体公開って、あれだろ? 『
どうやってそれをやるんだ? と
「まず、
「藍家に都合の悪い情報? そんなのがあるのか?」
「あるに決まってるじゃないですか。――特に、
ニヤ、と
「あーいう権力を振りかざす男は、男女関係なく手を出しています。でしょう?」
「……
いや、心当たりはあるのだけど。僕も先輩や上司に、何度かされかけたし。
隣を見ると、思いっきり
「こういうのは、名乗り出る被害者にあまりにも負担がかかります。匿名で告発しても、『嵌めるために嘘をつかれた』だの言われてしまうでしょう」
「……そうだな。それで心を壊したやつは多いよ」
思い当たりがあるのか、
「それを含めて、藍家の悪事はすべて藍大将軍によって始末され、皇帝までには届かなかった。ですが――直接、皇帝に話すことができるなら?」
「つまり……
「ええ。全員、藍家の被害者です」
この事は内密に、と花鈴が言う。
被害者だと名乗り出ることは、家の弱みになり兼ねない。だが、表向き皇帝の寵愛を受けているのなら、手を出されることは無い。それも複数なら、権力が一人に集まる心配もされない。
「もっとも、彼らは被害者の顔など覚えてないでしょうね。自分たちが権力をにぎれたことに舞い上がっています」皮肉な笑いを浮かべる花鈴。
「あ、
「いやそこの心配は、……してたけど」
でも僕だけが許されたあの
「彼らの協力によって、藍家に都合の悪い情報は十分集められました。あとはこれを公開します」
「公開するったって……匿名じゃ結局、握りつぶされるんじゃないか? かと言って実名じゃ、被害者にとってあまりに残酷だ」
「ええ。実名は出しません。そして、この情報を
「は? 嘘のこととして伝えたら、意味ないだろ?」
訳が分からない、と
「まさか――『
僕の推理は正しかったようで、
「『
そう言えばそうだ。高官たちは、史実や礼学の経典と違い、作り物の物語は低俗なものと考えており、碁や六博よりも規則が簡易になった『
「しかも、この『
しかも人間は、探りたい生き物です。たとえ別の名前の
匂わせられればいいんです、と
「そして、噂が城下まで広まった時、朝議で皇帝が取り上げるのです。『ところで、藍家のこれこれの噂が流れているのだが――』と」
「たとえ噂だとしても、広がった時点で藍家に振り払う手段はないってことか!」
ふふ、と
「女と庶民を見くびっている奴らに、目にもの見せてやりましょう――――!」
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