連作短歌「僕のジィちゃん」

連作 「僕のジィちゃん」

1

参観日頼まないのにやってきてムダな若作りがワル目立ち

2

僕のことチン太郎などと呼びかけるテキトウにあしらうけどウザい

3

プレバトとケンミンショーのある木曜はテレビの前で独りご機嫌

4

僕に部屋とられて書斎をなくしたこと未だに恨んで根に持っている

5

リビングのコーナーを書斎化して何やら短歌らしきものなど

6

朝ルーティン薬服用血圧計ラジオ体操僕の見送り

7

ワンコインショップで買った老眼鏡トイレの中にも風呂場にもある

8

背の高さ腕相撲も僕の勝ちそれでもジィちゃん口だけは達者

9

「好きな娘（こ）はまだ出来ないか」と耳元で秘密めかして月に二度は聞く

10

春向きの僕のパーカー持ち出してどうやら勝手に着ているらしい

11

バァちゃんに内緒のへそくりあるくせに歳取るごとにケチ化している

12

糖尿病一歩手前となってなお食い意地だけは相も変わらず

13

湯に浸りカンツォーネなど歌うので近所迷惑と叱られている

14

探し物とにかく下手なジィちゃんに似てしまったとの自覚はある

15

「若いころ俺はモテた」と言う度に　バァちゃん即座に完全否定

16

ジジとババ職場結婚したという　相思相愛ってホントかな

17

「ただいま」に続けて秘密の合言葉言わねばジイちゃんドアを開けない

18

新しいアプリゲームをダウンロード　やり方こっそり僕に聞きにくる

19

ジイちゃんの背広ワイシャツコートなど「もういらない」と捨てるバァちゃん

20

衣替え終活するのに良い機会捨てるバァちゃん慌てるジィちゃん