第2部 秋悟と夏凛

第1話 序章

『春には桜を、冬には雪を』


 春には桜が、冬には雪が、

 どんなものにも、連想する何かは存在するだろう。


 ――ならば、僕には、何を?

 ――君には、何を?


 右手を広げ、掌を確認する。

 何も見えない。何も掴んでいない。


 いったい、僕には何が合うのだろう。

 何になれるだろう。


 君は何が似合うだろう。

 何になって欲しいだろう。


 憧れた才女・斎宮夏凛(いつきかりん)。

 彼女に僕は何が出来るだろう。


 僕、五十嵐秋悟(いがらししゅうご)は、

 晴れた空を見上げ、大きく息を吐いた。


『夏が過ぎれば、秋が来る。必ず、私の後には君がいる』


 一年。経った一年、されど一年

 生まれた年が違うだけで。


 壁と言うべきその超えられない何か。

 その何かは、いつも秋悟に無力感を与えていた。

 

 一つ上のお姉さん。

 それは小学生、中学生、高校生と変わらない。


 夢見た君の隣で歩く未来。

 非現実的なその光景。


 幾つもの時が経とうとも、

 秋(僕)が夏(君)と隣に来る日は無いのだ。


 春夏秋冬。

 それでも、僕は夏を支える秋となる。

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死ぬ前に僕は君と――えっちがしたい 桜木 澪 @mio_sakuragi

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