第7話

あれから、時々散歩をしている。


 前にあった子どもが、他の子どもを連れて来て俺にサインや握手を頼んでくるようになった。中には俺のサインを「一生の宝物にします」と言ってくれる子どももいる。やっぱり子どもの笑顔はとても元気が出る。


 「あつく!!」


 「恵美奈」

えっちゃんだ。


 「あつく、やっと話せた。」


「何か用事?」


「戻って来てよ。」


「嫌だ。」


「お願い、私もう限界なの。あつくが抜けてから本当にもう私達オワコンになっちゃった。あつくが抜けたことで苦情も沢山来たの、あつくが抜けてからあつくの本当の大切さが分かったの、だからお願い。」


「いや、オワコンに戻る意味ないでしょ。」


「お願いよ。」


「嫌だ。戻る意味ないし。そもそも自業自得じゃん。俺の意見聞かなかっただろ。」


「私は意見を聞こうとしたよ。でも他の人が聞こうとしなかった。それを見て私はみんなが賛成したから私もそうしただけだよ。」


「いや、俺の意見に対して無反応なのは聞かないのと同じだろ」


「だって、私こそ、意見言わずに我慢してたんだよ。あんな空気じゃ言える訳がない。下手に壊すより我慢の方がマシだったよ。」


「それが今の状態に繋がったんだけどね。あと我慢するのは自分だけの問題、空気が悪かったのは俺も同じ。むしろ俺は必ずみんなに意見を何回か振った。その時は一度も答えなかった。」

俺の意見を聞かなくなってからは、基本的に一輝と妹と桜花が勝手に話を進める。俺は毎回一度は意見を言う。が、いつも無視されるか流された。

 

 「それに俺の意見には無言で、他の意見には賛成してるんだから、一緒だよ。奴らと同じ俺はそう感じた。」


「それはあつくがそう感じてるだけだよ。」


「そうなのかもね。別にそれでいいよ。じゃあ、俺はそう感じたので意見が通らない所には戻りません。」


 「もう、ドッキリは嫌だ。あんなのパワハラよ。昔は楽しかった、幼馴染の関係はどうしたの?」

 

 そんな泣きながらしゃがんでいる恵美奈の横に子どもが通る。


 「あっくんーまた新しい友達連れて来たからサイン書いて!」


「いいよ!」


そして、子どもは感謝して帰っていった。


 「みた?恵美奈?」

  恵美奈は泣いて答えない。


 「これが人気の差だよ。みんな恵美奈を見て居たけど子供たちは察したのもあるけど誰一人話しかけなかった。戻る必要ある?」


更に恵美奈は泣いて、目立つ前に俺はその場から退散した。


 

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