その42。アリアの力

「———初めまして1年S組の皆さん。私はこのクラスの担任を務める事になったエデュアルト・グランドバーンです。これから1年間宜しくお願いします」

「「「「「「「宜しくお願い致しますわ、エデュアルト先生ぇ〜〜」」」」」」」


 そう言って、眼鏡を掛けたクール系超絶イケメンが丁寧なお辞儀をする。

 その仕草や顔立ちで、1年S組の女子達の大半は目をハートにしていた。

 

 ……チッ、何だよやっぱどの世界でもイケメンが良いのかよ。

 ええ、勿論コイツも攻略キャラですよ、ええ勿論ね。

 名前で分かったけど、ビジュアル見れば攻略キャラだって一目瞭然な見た目してるもん。


 俺は基本イケメンが嫌いなので、心の中で舌打ちしていると……シンシア様が俺の横腹辺りの服を引っ張って来た。

 何事かと横を見れば……。


「…………アイツ嫌いよ」


 シンシア様が露骨ではないものの、嫌そうに眉間に皺を寄せていた。

 

「?? シンシア様は、あの先生と面識あるのですか?」

「……面識があるも何も、私と同じ公爵家の人間よ。しかもブリーズ公爵家のイリスと仲が良いわ」

「えっと……」


 誰だったっけ、イリスって。

 えっと…………あ、アリアの親友とか言う意味不明な公爵令嬢か。

 すっかり忘れて———ってかソイツのせいでアリアに常識ないんだろ絶対。

 でもそう言えばこのクラスには居ないみたいだが……。


 俺が辺りを見渡していると、シンシア様がボソッと教えてくれた。


「イリスはA組よ。私と仲が悪いあの女を学園側が遠ざけたんじゃないかしら」

「流石学園ですね」

「あの男を担任にする時点でこの学園の人達は無能よ」


 シンシア様が吐き捨てる様に言った。


 ははっ……随分と辛辣なことで……。

 よっぽどエデュアルトって野郎が嫌いなんだな。

 俺もアイツ、イケメンだから嫌いだけど。


「———話はここまでにして……はい、一旦注目してください」


 俺達がコソコソ話している内に、大分話が進んでいたらしく、一通り話の終わったらしいエデュアルトが手を叩いく。

 

 ごめんなエデュアルト。

 全く話聞いてなかったわ。


「これから皆さんには、クラスメイトとの交流も兼ねて実演形式で得意な魔法を発動させながら自己紹介をしましょう。では、グラウンドに10分後に集合して下さい」

「「「「「「「「「「「「「「はいっ!!」

」」」」」」」」」」


 ……又もや面倒な事が始まるらしい。


 俺は肩を落としながらシンシア様と共にグラウンドへの移動を開始した。









「———貴様らなら知っていると思うが……俺の名はレオンハルトだ!! 得意な魔法は炎魔法だ!!」


 そう言って、レオンハルト殿下は的に向かって試験の時より威力の高くなった同様の魔法をぶち当てた。

 

「おお、凄過ぎる……! これが王子殿下のお力か!!」

「流石王子殿下だな……」

「俺らとは次元が違うよ……」

「レオンハルト様、カッコいいですわ……」

「サディスティックな所も男らしくてステキですわね……」


 そんな称賛の声を聞いていた俺とシンシア様はと言うと……。


「———相変わらず雑魚ね」

「……シンシア様、レオンハルト殿下は十分凄いと思いますよ?」

「何よ、私より雑魚じゃない」

 

 対照的に物凄く辛辣な評価であった。

 

 いや俺的には凄いと思うぞ?

 天才って言うのもあながち間違いじゃないんだな……と感心するくらいにはね。


 そもそも数日で魔法の威力を上げるなんぞ凡人には不可能だ。

 それを軽々しくやってのけるレオンハルト殿下はそこそこ凄いのである。


 シンシア様はただの超神童です。


「素晴らしい魔法でしたね。次は……アリアさん」

「はいっ!」

 

 元気よく華やかな笑みを浮かべて挨拶するアリア。


 どうやら次の自己紹介はアリアらしい。

 正直、ただ馬鹿で傲慢なレオンハルト殿下より嫌いなので見たくない。


「初めまして皆さん! 私はアリアと言います。得意な魔法は回復魔法です!」


 アリアがそう言った瞬間———生徒達の間でどよめきが起きる。

 

 な、何だ……?

 回復魔法ってそんなに貴重なのか……?

 と言うか……アリアの魔法って回復魔法だったっけ?


 俺が周りのテンションに取り残され、尚且つアリアの魔法を思い出そうとしていると、アリアがレオンハルト殿下によって壊された的に近付くと口を開いた。


「今から回復魔法を実演しますね! 我が手に命の光を———【ヒール】」


 アリアがそう言った瞬間、目の前の的がまるで時を戻すかの様に元通りになった。

 同時に生徒達から大歓声……が上がることはないものの、拍手されている。


 貴族が没落貴族に拍手するとか……ありえないんだけど。


 俺が困惑し、シンシア様が無言で見つめる中、エデュアルトも同じく拍手をしながら言った。


「回復魔法ですか……現在我が国に1人しか居られない回復魔法の使い手とは……実に素晴らしいですね。これからも頑張って下さい」

「はいっ!」


 そんなやりとりをするアリアを見ながら、俺はやっと女神の言っていたことを思い出した。




 アリアの本当の魔法が———だと言う事を。


 


————————————————————————

 イリスって誰やねん。

 久し振り過ぎて忘れてたので訂正と、普通に変更。


 アリア→平民ではなく、没落貴族。

 セーヤの母→アリアではなくアリスに変更。


 忘れててごめん。

 今後とも宜しくお願いします。



 それと新作上げました。

 今作と同じ異世界ファンタジーで学園モノです。

 是非見てみてください!


『元勇者が教える魔王の倒し方〜500年前の元勇者、新たな魔王が現れたので仕方なく勇者学園の教師となる〜』

https://kakuyomu.jp/works/16817330668278560842 

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