その29。「この魔法は最強だ! 副作用で死ぬがな!!」
俺の体を真っ白な炎が包み込む。
シンシア様はびっくりして少し離れているが、その炎はシンシア様に当たってもその身を燃やすどころか、徐々にシンシア様の顔色が良くなり、落ち着いていることが感じ取れる。
そもそもシンシア様の炎魔法適正はフレイアが言う通りめちゃくちゃ高く、炎魔法自体が効かない。
「な、何だこれは……?」
リーダー格の男が一歩後退りながら俺の姿に慄く。
まぁしょうがないだろう。
今の俺の姿は服が炎に変わり、その上から白い炎でできたロングコートに身を包み、髪の毛も白炎に染まっている。
この世界で魔法を身に纏うと言うことは、ほんの少しのミスで死んでしまうので余程の強者でなければやらない。
「こ、小僧……お前そのままじゃ死ぬぞ? 死にたくなければ大人しくそこのガキを渡せ」
「嫌ですよ。だって今の俺なら勝てるんですから。それに俺は死んでも死なないので」
「それはどう言う———っ!?」
俺は手を前に翳し、【炎竜王の息吹】を発動。
ブレスと言うよりも光線の様に凝縮された炎がリーダーの横を通り過ぎ、部下を何人も巻き込んで燃やし尽くす。
「ぎ、ギァァアアアアアアツイィィイイイイ!!
「嫌だ嫌だ嫌だ死にたくな———アッ」
「ちょ、ちょっと待っ———」
「お前ら!! ———チッ、気をつけろ! 奴は間違いなく大魔導士の領域に入っている! 一斉に水魔法を唱えろ!!」
リーダー格の男の指示と同時に水魔法が展開され、半分は自分たちの盾に、もう半分は俺の炎を消そうと此方に迫る。
しかし———
「無駄ですよ。この程度の水では僕に触れることすら出来ません」
その言葉の通り、俺に近づくにつれどんどん蒸発していき、僅か数十センチ動いただけで完全に消え失せた。
その余りの異様さに相手側は顔が隠れているにも関わらず驚いているのが分かる。
「さて……次は……」
俺は水の盾に手を翳すと【炎竜王の波動】を発動。
その瞬間に白い炎が部屋全体に波動の如く広がる。
しかし部屋のものは一歳燃えておらず、襲撃者のみが一瞬で灰になって行った。
その凄惨な光景を目にしたリーダー格の男は、ぶるぶると体を震わせ、俺を恐怖一色に染まった瞳を向けている。
そして目が合うとサッと目を逸らし、
「……撤退だ」
「どうしたのですかボス!」
「———撤退だ! あのガキは取り敢えず諦めろ!」
我先に割れた窓に向かって走り出す。
そんな情けない男に他の襲撃者達はポカンとしていたが、すぐに悲鳴をあげて逃げ出すが……。
「誰が逃げていいと言いましたか? 公爵家に襲撃をした罪を償わないと。勿論あなた方の命で、ですが」
俺は再び【炎竜王の息吹】を発動し、此方に背を向ける襲撃者を灰に変える。
先程までめちゃくちゃ多かった襲撃者は、俺の炎に焼かれ、遂に残るはリーダー格の男だけどなった。
俺は試しに【炎竜の息吹】と言う下位互換の魔法を発動させる。
その魔法は火炎放射器の様に手から炎が飛び出して片腕を溶かしてもぎ取る。
焼いているのでそこまで痛くないはずだが、
「あぁあああいあああああああ!?」
男はまるで子供の様に涙を流して頭に悶えていた。
傭兵と名乗りながらこの体たらくというのにため息を吐く。
まぁ楽だからいいか。
「さて……残りは貴方だけですが、どうしましょうか」
「ふんっ、俺を殺してみろ! 俺を殺したら俺に依頼した貴族が黙っていないぞ! どうだ? 殺さないだろう!?」
「いえ別に」
俺は高速で目の前に接近すると、胸を炎によってドラゴンのための様なものを纏った手で突き刺す。
「あ、ああ……そ、そんなバカな……」
「別に貴方は生きていようが死んでいようが関係ないのです。どうせ誰かが蘇生して記憶を漁ると思いますから」
「き、記憶を漁るだと……?」
「そうです。本来死んでいる何かに使う魔法で、一瞬にして本人でも忘れているであろう記憶まで閲覧できるのです———だからお前はすでに終わってんだよ———【炎竜王の巣】」
その瞬間に、8つの炎が地面から発生して、リーダー格の男を中心にドーム状に炎が集まる。
「や、やめろ! な、何でもする! 何でもするからやめてくれ!!」
「もう遅い。そのうち公爵家で殺されるんだから」
俺がぐっと手を握ると、炎が凝縮し、男が逃げれない様に円上になった。
「ふぅ……これで終わりですかね……シンシア様……」
「な、なに?」
「少し死んできますので少々お待ち下さい」
「え? ちょ、ちょっと待ちなさいよ!」
俺は大声で俺の声を呼ぶ彼女の声を聞きながら意識を手放した。
《死亡しました。自死のため、ステータス増加はありません。時間の巻き戻しもありません》
《レベルアップしました。レベルアップしました。レベルアップしました……》
—————————————————————————
☆とフォローよろしくお願いします!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます