第18話 不穏な6日目

 俺は王妃様の部屋を後にした。


(あの最後の言葉が頭から離れない。

 "あんたは必ずくる"

 あれはどういう意味なんだ?)


 6日目


 コンコン


 早朝、俺の部屋の扉がノックされた音だ。


(あれ?

 今日誰か来る予定なんてあったか?)


 俺は恐る恐る扉を開ける。


「王子様、朝早く申し訳ございません。

 ちょっと、裁判のための資料の提出の仕方がよくわからなくて、、、

 少し中に入れていただけますか?」


 そこに立っていたのは白雪姫だった。


「そうでしたか、、、

 では、手順をお教えしたいので、そこに座ってください。」


「ありがとうございます。

 では、遠慮なく。」


 それからしばらく20分ほど資料の提出に関してのやり方を教えた。


「はぁ、やっと終わりましたね。」


「はい、この作業が一番時間がかかりますからねぇ。」



 そして、白雪姫が扉の前まで歩いて行き、部屋が出ようとした、その瞬間、


「さて、王子様。」


 白雪姫が扉の目の前で俺のことを見つめてくる。


 グワん、グワん、グワん


(は!

 なんだ、、、この視界が歪むような感覚は、、、

 脳みそに無理やり白雪姫に対しての好意的な感情をねじ込まれてるような、、、!)


「すみませんが!

 どいてください!」


 俺は怖くなって白雪姫をどかし、走って向かった、ペスの部屋に。


「はぁ、はぁ、、、」


 ダッシュでペスの部屋の前まで来た俺は疲れ果てながらも扉をノックする。


 コンコン


「あら、なかなか早かったわね。

 ね?言ったでしょ?

 "必ず来る"って。」


 得意げな表情をしながらペスは部屋の中に入れてくれた。

 すでにそこには準備していたかのようにアディも既にに立っていた。


「で?

 何があったんだい?

 まぁ、大体わかってるけどね、、、」


 ペスはニヤつきながら答えた。


「、、、白雪姫のあの魅惑?のような物の正体を教えてくれませんか?」


「やっぱり、その話かい。

 大方、部屋まで入られて"あれ"を受けたってところかな。」


「はい、おそらく、、、

 でも、途中で抜け出してきました。」


「ふーん、それぐらいの抵抗力はあるのかい。

 まぁいいか、アディー、説明を始めなさい。」


「はい、ペス様。

 我々は数年前、白雪姫の側近が異様に白雪姫に対しての忠誠を誓っていることに気づきました。

 それから、私が様々な専門的な観点から調査をいたしまして、、、

 ええと、白雪姫の顔が幼少期の頃から大幅に変わっていることについては前回、話しましたっけ?」


「はい?なんですか!?それは!初耳です。」


「そうでしたか、白雪姫の幼少期の顔はお世辞にも綺麗とは言えませんでした。

 ですが、成長するにつれ段々と美人へ変わっていったのです。

 それに加え、、、先ほど王子殿下がやられたあの魅惑のような能力、これらをどうやって引き起こしていると思いますか?」


「そりゃぁ、なんか道具でも使ってるんじゃないですか?」


「いいえ、彼女はそんな足がつくような方法は取りません。

 我々はおそらく、魔法だと考えています。

 魔法は痕跡も残らない、、、

 故に最強の"犯罪道具"なんですよね。」


「、、、事情は大体わかりました。

 信じましょう。

 まぁ、俺も実際やられましたしね。

 でも、痕跡が残らないならあなた方はこれからどうやって無罪を証明していくんですか?」


「はい、魔法というのは"可視化"することはできるんです。

 例えば、魔法にかかった人などに可視化する魔法をかければその人が赤く光ったりする、というように考えてもらって構いません。」


「なるほど、、、

 では、あなた方は法廷でそれをして証明を行うつもりですね?」


「まぁ、そういうことだ。」


 ペスが話し合いに混ざってくる。


「でも、あんたまで魅惑にかかったら、もうどうしようもないからね、、、

 危なかったわ。あんたにある程度の抵抗力があって、、、」


 ペスは俺にもう部屋を出て行くように促してきたため、俺は部屋に戻ろうとする。


「では、私はもう帰らせていただきますね。」


 俺は扉の前まで歩いて行く。


「じゃあね。

 次は法廷で会うことになるのかしらね。

 まぁ、厳粛な審査をお願いするわ。」


「わかっています。

 では、王妃様こそお気をつけて。」


 俺は全てのモヤモヤがすっきりとしたせいか、純粋に疲れたせいかわからないが、

 安心してぐっすり眠ってしまった。


 この時、俺はこのあと起こる結末悲劇を知る由もなかった。











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