第2話 魔王の思惑

 俺が師匠と出会ってすぐ、師匠との特訓が始まった。

 少しは手加減をしてくれるかと思ったら、

 師匠は毎回、別に盛ってるとかなしに死ぬ寸前まで俺を追い詰めてきた。


 その中で俺の勇者としての属性が闇であること、師匠は魔族領が飢饉に陥っているためにやむおえず人間の国である、フラジャイル王国と戦争していることを知った。


「わしはな、魔族のため、、いや娘のためにはなんでもすると心に決めておるんじゃ。

 まぁ、そのせいで今は戦争なんかしちゃって、、、

 はぁーーー、もう辞めたいわい。」


「なんか師匠が苦悩の魔王クレイジープリンセスって呼ばれてる理由がわかった気がする。」


「そんなこと言っとらんで、お前は早く強くならんか、、、」


 俺は何かのためになんでもする。

 そんな師匠に憧れていたし、尊敬していた。


 それから1年後、王国に勇者が出現したと話題になった。


 光、炎、水、木の属性の4人だった。


「やはりか、、、女神あいつらは新しい勇者を送り込んできたみたいだな、、、」


「師匠、、、勇者に勝つために、、、俺、、もっと強くなりたい。」


「ああ、わかっておる。そんな奴らの首くらいポキポキ折れるくらいには強くしてやる」


 俺はこの時々師匠が見せる怖い顔が好きだった。


 それから、3年後

 俺は突如言われた。


「お前はもう十分強くなった。 

 しばらくは山の中で修行しなさい。」


「な、なんでだよ!

 俺は、俺はまだ師匠に勝ててない。」


「お主はもう十分強くなった。

 それに山での修行は楽だと思うぞ!」


「いやだから、俺はまだ師匠と、、、」


「いいから、行かんかい。

 お主には、お主の"役目"がある

 それは、わしも同じじゃ、、、

 これからやらんといけないことがある。

 ほら、そのゲートをくぐれば山にある練習場に着く、、、


 頑張るんじゃぞ。

 次会ったときにはわしに勝てるぐらいにはなっとかんと承知しないぞ!」


 師匠は俺に背伸びをして頭をポンポンと撫でた。

 何か惜しいような、でも満足そうな顔をしていたと思う。


「うん。じゃあ、、、行ってくるよ。

 師匠も元気でな」


 俺はゲートに向かって歩みを進めた。


 俺はこの感じを知っていた。

 あっちの世界(日本とか)と永遠の別れを告げたときと一緒だ。


 今度も何かとの"別れ"がくるかもしれない。


 でも、俺はこの気持ちを無視した。

 前の別れは永遠の別れでも、師匠と出会うという良い方向に進んだからだ。


 俺はゲートをくぐった。


 それからはしばらくは昔、俺を殺そうとした山にいる魔獣たちを一方的に蹂躙した。


「まぁ、人間4年もあればこんだけ成長するもんだよな。」


 1ヶ月後、師匠が勇者達との戦いに負けたという報告を受けた。


 俺は後悔した。

 それはもうその時の自分を殺したいくらいに。


「あ、あそこでゲートをくぐっていなければ、、、クソッ、師匠はもうすぐ勇者が来るってわかってて俺をここに寄越したのか。」



 "お主には、お主の役目がある"


「師匠、、、俺の役目ってなんなんだよ、、、」


 しばらくは何もする気が起きなかった。


 復讐?


 そんなことをしても師匠は喜ばない。

 それはずっと一緒に暮らしていた俺が一番、分かっていた。


 精神的に狂いそうになっていたとき、、

 一つのことを思い出した。


 "師匠の娘"はどこに行ったんだろう、、、


 魔族と人間が一緒に仲間として暮らしているという魔道国家のどこかで魔法を学んでいる

 ということ。

 名前がアイドス•レリエルということ以外は何も知らない。


 しかし、俺は思った。


「"師匠の娘を守る"

 これが俺の役目なんですね、師匠」


 俺は1年間、山の中で独学で修行を進めた。

 毎日、自分の体を壊して、壊して、壊しまくる日々。

 半分は理性。

 もう半分は狂気だったと思う。


 ほとんど何もわかっていない魔王の娘を守るために修行をする。

 これが何もなくなった俺が俺であると自覚できる自分のアイデンティティのようになっていた。


 ふと、今思えば不自然なことばかりだった。


 師匠は魔王なんだから自分の娘なら自分で育てればいい、なのに魔法を学ばせに外に出した。


 どこまでが師匠の思惑かはわからない。

 でも俺は今まで背負った恩を返すため、

 何がなんでも頑張ると決めている。


 俺はもう"後悔"はしない。


 1年後(現在)

 俺はフラジャイル王国から手紙を受け取った。

 いや、正確にいうとフラジャイル王国の首都のミエルにある魔法学院、聖魔ディスティニー学園からだ。


「今年の新入生に貴殿は選ばれた、か、、」


 最初は行くきはなかった。


 でも、、、俺の中の勘が言っている。


 ここに行け、と。










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