論文の引用と著者について
『報徳記』の続きをみます。
金次郎さんは百金を分けてこれをあたえられました。
百金(百両)を分けていただき、家僕・召使たちは一度は驚き、一度はよろこび、ご主人の恩を感ずること深く、また金次郎さんの慈心がかぎりないことに感動しました。
金次郎さんは服部さまを辞するに一物をもうけず、瓢然として家にかえられました。そのなされるところは往々このようなものでした。
このように伝えられています。
さてここまでの金次郎さん(二宮尊徳翁、先生)の事績については、『報徳記』という本によってまとめさせていただきました。
ただ富田高慶さんという人が書かれたこの『報徳記』という書物は、実際に金次郎さんからお話をおききしたのではなく金次郎さんを知る人から話をきかれたものです。実際の服部家の立てなおしはどのようなものだったのでしょうか。それを調べた方がおられます。
金次郎さんののこされた史料があるため、それを研究されている論文があるのです。
加藤仁平「二宮尊徳に於ける教育精神の進展」その一(上)、(中)、(下)(『教育学研究』4ー1、2、4、1935年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyoiku1932/4/1/4_1_1/_pdf
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyoiku1932/4/2/4_2_131/_pdf/-char/ja
https://www.jstage.jst.go.jp/article/kyoiku1932/4/4/4_4_405/_pdf/-char/ja
並松信久「二宮尊徳における農業思想の形成」
(農林業問題研究19(1)、1983年)
https://www.jstage.jst.go.jp/article/arfe1965/19/1/19_1_28/_pdf/-char/ja
これら二つの論文を以下で参考にさせていただきました。
加藤仁平先生については戦前から金次郎さん、つまり二宮尊徳先生の研究をされた方で、戦前から戦後にかけての二宮尊徳翁の研究において多大な功績をのこされています。
並松信久先生も金次郎さん、二宮尊徳翁の研究において多大な貢献をされた方です。今年、令和五年三月で京都産業大学を退官されたとのことですが、金次郎さんについての立派な論文を何本も書かれています。
なお時代を追うのにつかわせていただいた『二宮尊徳選集』の著者の
年表では前述のとおり、報徳二宮神社のまとめられたもの、報徳博物館のまとめられたものをホームページから参照し、使わせていただきました。
報徳二宮神社は二宮尊徳翁を御祭神としてお祭りしておられる神社で、その御生涯や考え方を簡潔にまとめられています。
https://www.ninomiya.or.jp
報徳博物館は公益財団法人の報徳福運社が運営されているもの、関係の行事など研究を積極的に行われている博物館です。
https://www.hotoku.or.jp/info/
いずれも小田原市にあるようです。
あと各論文とも佐々井信太郎先生の『二宮尊徳全集』を利用したとお名前を出されています。
金次郎さん、つまり二宮尊徳翁については数多くの研究がなされていますが、佐々井信太郎先生の手で全集・三十六巻が編まれています。
佐々井信太郎先生というのは金次郎さん(二宮尊徳翁)についてかなり詳細な研究をなされた方のようです。明治七年(1874年)の生まれで、戦前の岩波文庫の『報徳記』、『二宮翁夜話』とも佐々井先生が校訂されたものだといいます。
『二宮尊徳全集』は1932年に発行されていますから、今回使わせていただく論文にもこの成果が取り入れられています。
では服部家の立て直しの詳細をみますが、一旦これまでの流れをしるしておきます。
服部家の再興というものに金次郎さんは成功されました。これについて鴇田先生(『二宮尊徳選集』の年譜)は金次郎さんが二十四歳から二十九歳までかかって、その偉業をなされたとしてされています。
『報徳記』では金次郎さんは借金を返済して三百両の余剰金が出たため、ご家老さまに百両、奥さまに百両をわたして不意の備えとなし、残り百両を服部家の家臣に配って我が家へ去っていったことになっています。
ただ金次郎さんがそのあと服部家において二つの改革案(仕法の書類)を書かれています。その時期はどうも三十一歳から三十六歳ごろらしい。それをさらに詳しく調べることにします。
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