第59話 今朝の出来事

「奏汰くんおはよー」

「あっおはようございます」

「今日はいよいよハロウィンパーティーだね」


 そう、今日はハロウィンパーティー当日。僕自身何をするのかさっぱり分からないけど、楽しそうなことだけは分かる。


「ハロウィンパーティーって夜からですか?」

「そうだよー」


 静華さんはそう言いながら窓際まで歩き、日差しが入るようにカーテンを開けてくれた。


「窓開けとく?」

「そうですね、お願いします」

「おっけー」


 澄み切った空気が部屋の中に入り、2人の髪が緩やかになびく。


「あっ! そうだ、清拭せいしきする? 朝からさっぱりするよ」


「でもそれって静華さん面倒じゃないですか? 準備とかしないとだし」


「それはしたいってことね! 持ってくるわね」

「えっ! ちょ──」


 奏汰の言葉を聞かず、静華さんは部屋を飛び出ていった。


「ほんともう......優しすぎでしょ」


 そして勢いよく部屋を出た静華さんはというと──


「また......髪触れれる......!」


 いつも触ってるけど、朝はなんか特別感あってドキドキしちゃう!


「どうしたの? 何時もよりニヤニヤして」


「普段もニヤニヤしてないわ! って雪希子ゆきこさん、もしかしてるなちゃんの頭洗ってあげるの?」


「そうだよ、灰羽さんもなんだ」

「さっぱりさせてあげたいじゃない」

「そうね」


 2人は棚に保管してあるシャンプーやリンス、その他清拭に必要なものを手に取り、部屋を後にした。


「あれ雪希子さん、バスタオル1枚でいいの?」

「うん、だってるなちゃん普通にお風呂入れるし」


 神崎さんにそう言われ、2人の間に少しの沈黙が訪れた。


「......確かに! そうだったそうだった! 体の方は特に異状は無いんだよね?」


「定期的に検査はしてるけど今のところは大丈夫そう、心の方も灰羽さんが来てから安定してるし」


「奏汰くん様様だよー」


 病院内でるなちゃんを1番知っている神崎さんにるなちゃんの現状を聞いていると、目の前には奏汰の部屋があった。


「それじゃあまた後で」

「うん、また後でねー」


 るなちゃんも今のところ調子良さそうだし、様子見が続きそうね。奏汰くんは......少しづつ骨折も治ってきているし、体調もいい感じ、でも懸念すべきはやっぱり記憶喪失ね。こればっかりは奏汰くんに思い出してもらわないと......後で奏汰くんに聞いてみようかな。



 静華さんは色んなことを考えながら、奏汰の部屋へと入っていった。


「お待たせー」

「おかえりなさい」


「あらベッドから降りたの?」

「これぐらいは1人でも何とか、もちろん無理のない範囲でですよ」


「でも基本は看護師さんに手伝ってもらってねよ? 私が居なかったらナースコールで他の看護師さん呼んでもいいから」


「分かりました、このボタンですよね?」


 そう言い、奏汰はベッドに付いているナースコールボタンを手に持った。


「それだよ、それを押すだけで看護師さん来るから」


「分かりまし──あっ!」

「えっなに!? ......もしかして押しちゃった?」

「......えー......手が滑ったと言いますか......」


「まあまあ、大丈夫よ、間違えて押しちゃっただけだから」

「......よかった」


 焦ったぁ......本当にやらかしたかと思ったぁ......今度からナースコールボタン使う時は気をつけよ。


 そう奏汰が決意した時、さっきのナースコールで来たと思われる看護師さんがドアをノックし、声を掛けてくれた。


「灰羽さん、失礼しますねーって──」

夏凛かりんちゃん!?」

「なんだ静華いたんだ、なら安心」


 黒沢くろさわ夏凛かりんさん? だったかな、ナースコールで来るのがまさかの静華さんの同期だったとは、運が良いのか悪いのか......


「ごめんねー、間違えて押しちゃっただけなんだ」


「そんなことだと思ったよ、だって灰羽さんには静華が何時いつもも一緒にいるし、もし静華が居なくて灰羽さんがナースコール押したって気づいたら、直ぐにそのバックポケットの中に入っている子機を使うだろ?」


「すみません......」


「それじゃあ私は通常業務に戻ろっかな」


 そう言って夏凛は踵を返し、部屋のドアを開けようとすると、静華さんが声を掛けた。


「待って! せっかくだし夏凛ちゃんも奏汰くんの清拭やってかない?」


「静華さん......それはさすがに──」

「いいよ、やろっか」


 奏汰の発言を遮って夏凛はそう言った。


「やった、ありがと夏凛ちゃん!」


 本当なら私が1人でやる予定だったけど、たまには布教も大事よね。


「本当にやってくれるんですか?」

「何時も静華がお世話になってるからな」


 ていうのは冗談で、この子も部分的記憶喪失っぽいのに事故でなったらしいじゃん、一応関わり持っといた方が央光おうこうの事件ともし関係してた時、直接灰羽さんに話を聞けるからな。それと普通に興味湧いたし、面白そうじゃん。


「いやいやお世話するのはこっち! 仕事取られちゃ病院 首になっちゃうよ!」


「それじゃあ清拭という名のお世話をしますか」


 この言葉をきっかけに、2人は清拭の準備をし始めた。夏凛は準備のため洗髪台へ、静華さんは奏汰をベッドから下ろし、車椅子を洗髪台の方へ走らせる。


「お水も持っていくね」

「ありがとうございます」


「ていうか今飲む?」

「喉乾いてるので飲みたいです」

「どうぞー」


 静華さんから受け取ったお水を飲み、喉に潤いが届いたところで場所はシャワー室、直ぐ横には洗髪台があった。


「寝起きだし、まずは顔洗おっか」

「僕の心読みました?」

「顔洗いたいって思ってたの?」

「思ってました」


 静華さんって相手の心を読む力絶対持ってるよね!? 周りに言ってないだけで、実は超能力者だったり?


 そんな現実味のない事を考えながら僕は蛇口を軽く捻り、水を出して顔を洗った。


「このタオル使いなー」

「ありがとうございます」


 僕は黒沢さんに渡されたタオルで顔を拭いていると、耳に誰かの息がかかった。


「灰羽さん、あなたは誰?」



ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー


あとがきです。



どうも、まどうふです。

今回も見てくれてありがとうございます。


さて、今回はハロウィンパーティー当日の朝を書いてみました。最後に気になることを言われたと思いますが、また次回ということで。


ここまで見てくれてありがとうございます、良ければフォローと♡、★のほどよろしくお願いします!


以上、まどうふでした!

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