生きるだけで、歳を重ねてしまうのにね

ひぐらし

青年に紛れ

成人式を迎えた。元々友人が少ない僕にも、見たことある人達が皆大きくなったなと感じるほど、人間の成長はあからさまだった。中には話しかけてくれる人もいた。「あの頃とはガラッと変わったね」と皆に言われたし、僕もそう思った。冷たい風が僕の髪を乱す。「大人にならなきゃいけないね」とどこかで聞こえて鳥肌が立った。二十歳を迎え、お酒を飲めるようになり、煙草を吸えるようになり、僕等が昔想像していた、大人がしていることはひと通り出来るようになった。ただ、酒が飲めるから、タバコを吸えるから大人になる訳ではなかった。いつまで経っても僕は、外の世界が怖い少年のままだった。職に就いている、医者を目指している、一浪してでも夢を掴もうとしているそんな青年達に紛れて僕が立っていた。少年という殻を破り、羽ばたこうとする皆を見て怖かった。必死に殻を繋ぎ合わせて少年でいようとする自分に嫌気がさした。

死にたかった。死にたいと病んでいる自分に気付いて病んだ。

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生きるだけで、歳を重ねてしまうのにね ひぐらし @202076mama2

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