第7話:やはり軍備をしないとかぁ⚔⚔⚔⚔

「困ったな~」

「どうしようね~」


 皆さん、こんにちはそしてこんばんは。

 孤児院のとなりに建っている粗末な修道院の庭で、転がっている丸太に腰掛けている私。


 ひざの上に両ひじをついて、思案にふけっているユーリア六歳です。


 となりには同じ顔をした半透明の『羽根と輪っか付き』少女、本物ユーリアちゃん。ユーリア1号が。


「ユーリア1号。ぽよんぽよん女神はいつも何をしているの? 暇そうだったけど」


「あのねユーリア2号……この呼び方嫌い。由利ちゃん。

 んとね。女神さまは最近リストラされて暇なんだって。やりたくない就職先はいっぱいあるけど、えり好みしているの」


 プータローだったのか!

 職業をえり好みできるとか、なんちゅうホワイト環境!


「それでね。由利ちゃんが大神殿建ててくれれば、そこに住み着いて起業するんだって」

「勝手に『大』つけているし。でもこっちのローマニア教会を無視して大丈夫なのかな?」


 ローマニア教会は一神教だ。

 唯一神以外を信仰すれば異端者だよ。

 そこに別の神様の神殿おっ建てて、大丈夫なはずがない。

 私は偽装してひっそりやろうとしていたのに。


「それがね。ローマニアの神様。ロイヤリティ払ってくれればOKだって。名義貸しというものだって」


 神様たち!

 なにやってるんだい!

 そっちの方が資本主義発達しているし。


「そういうわけで、宗教的な問題は気にしないでって、女神さま言っていたよ?」

一物いちもつの不安がある」


 一抹どころでない不安があるんですが。


 とにかく前進するっきゃないよね。

 進路は定まった。


 進め、ユーリア!


 ここに聖堂を建てて、そこでの信用で『紙幣を発行する』。


 最初は銀兌換だかん

 1枚の紙幣なら銀10kgに交換できる。

 フッガール商会から借りたものを担保にして発行。


 そしてフラマン王国の国債を買う。


 え?

 普仏戦争ではプロイセンが勝ってドイツ帝国が出来上がるって?


 そんなこと知っていますよ。

 今のままだったらそうなるでしょうね。

 結構、この異世界の常識になっているみたい。


 だからそれをぶっ潰す!


 フラマンに恩を売って大公国の後ろ盾になってもらう事にいつの間にかなってしまいました。


 結構自信があります。

 ここまでは。

 チート機関砲を連射、炸裂させますから、きっとうまくいく。

 その準備もアントンさんと協議済み。


 問題はここからですね。


 あのクール殿下にまだ言ってない!!


 アントンさんが殊勝ムーブで寝たきりの大公殿下に直談判。

 快癒祈願で教会を新築すると喜捨を申し出て、勝手に話が進んでいます。


 裏で進んでいる金融戦争のことを、美クール閣下にどう伝えようかと思案中です。


「どうせあの美クールの事だから、いずれ気が付くんだからなぁ。問題はいつ、どのくらい話すかですねぇ」


「その『美クール』とは俺のことか?」


 どひゃああああ!!


 肩越しに漆黒貴公子様が出現。


 幼児に対して壁ドン床ドン、あごクイッは犯罪です!


 え?

 そんなことしてませんか、そうですか。

 失礼いたしました。


「さあ話してもらおうか。お前の悪魔的な所業の数々を」


 やっぱまだ悪魔と思っていらっしゃる?


「は、はい。正直に話しますから勘弁してください。壁ドン床ドンは勘弁して~」

「なんだそれは。そのひねくれた口を割らせるのにはこれが一番の武器だろう」


 美クールの後ろからぞろぞろと孤児院のみんなが。


「ユーリアちゃん。すご~い。怖い大人を退散させたんだって?」

「どうやったの? アリアにも聞かせて~」

「もっともっと面白いことできるのかな?」

「ずっと一緒に勉強しようね」


 み、みんな。

 ごめん。


 地球にいる教え子の大久保君、桂さん坂本君、西郷君!

 先生は血迷っていました。

 お金は道具。

 目的は学校作りだったよ。


 そのためにけがれたことはしちゃいけないよね。

 金融戦争はしない。

 生産活動をみんなで楽しくやろうね。


 つかむワラを間違えそうになっていた。


 いつのまにか姿が見えなくなっていた本家ユーリアちゃんが笑った気がした。



 ◇ ◇ ◇ ◇



「それでユーリア、お前は稀代の大ウソつきになるという訳か」


 またまたゲンドウポーズで怒り心頭のレオナルド公子様さまでございます。

 お代官様、おゆるしくだせぇまし。


「は、はい。すべては私の不徳の致すところ。この罪はいかようにも。

 ですが、今は有事が目の前。

 軍備を整える資金が必要。その軍備をフッガール商会の助力でできる見込みが。他にも数多の製品を鋭意開発中です」


 仕方ない。

 学校作りはあまり進まないだろな。とにかく生き残らねば。


 この異世界は、軍事力が地球の18世紀末くらい。

 もちろん魔法などという超チート概念はない!

 

 フリントロック銃。火縄銃の着火機構が火打石になった程度の鉄砲と騎兵、大砲を使うんだ。


 2~30年まで長槍パイクが歩兵の武装だったけど、鉄砲の射程が伸びたので、銃剣を付けた銃兵が隊列を組んで敵に進んでいくことが主流。


 そこを突き崩す大砲と、騎兵。

 胸甲騎兵が最強の部隊ですね。


「現在、技術チート……もとい、最新技術の粋を集めた画期的な兵器その他をフッガール商会の伝手で極秘に製造中であります!」


 思わず敬礼してしまいました。


「なんだ、その技術チートというものは」


 ちっ、聞き洩らさなかったか。


「はい。女神さまに教えてもらった技術です。ずるいくらいにすごい技術です」


「やはりおまえは背後に悪魔がいるらしいな」

「何でそうなるんですか!」

「人を殺す武器の作り方を教える等、女神のやることでは無かろう」


 うっ。

 おっしゃる通りです。

 正論を吐く人は嫌われますよ。


「め、女神さまは何でも知っておられるのです」

「では俺の好きな食べ物を言って見よ」


 そういうの普通ご神託で聞くかい!!


 あ。

 クール殿下の横に輪っか付きユーリアちゃん。

 クール殿のにおいをかいでから


【じゃがバターだよ~】


 サンキュー、ユーリア1号!


「じゃがバターでしょう、と女神さま(の見習い)が教えてくださりました」


 ゲンドウポーズがちょっと緩みましたよ。


「では、俺の愛犬の癖は?」


 なかなか攻めた質問だね。


「殿下の足にお尻を押し付けてきます」


「父の幼馴染は今どこだ」

「フラマン王国パリエ、サンベルニュ通り104号、202号室のベッドルームで美人さんとプロレスをされています」


「このくらいは誰でも分かる」


 わかるかい!


「ではこれは神でなければ分からないだろう」


 な、なんでしょうか。


「丘の上にある、わが大公国のシンボル。ラインの塔はいくつの石でできている?」


 ユーリア1号が耳元で教えてくれた。


 甘いな。簡単な質問だよ。私たちには。


 私は左手を腰に当てて、前に伸ばした右手の人差し指を左右に揺らしながら、エッヘンして答えたよ。


「980万8023個です!」

「違うな。一つ足りない」


 一々覚えてるんかい!

 ついつい、毎回突っ込んでしまうユーリアでした。


【昨夜、殿下はご自分で修繕なさっていました】


 なんと細かい。

 美クールはA型?


 私はその旨、美クール殿下に伝えるとやっと納得してくれた。

 回りくどい。

 めんどくさい奴だよ。まったく。


「ではその武器は何なのだ。そしていつできてこっちへ搬入される? 装備してから訓練してあと3年で部隊編成まで終えられるのか?」


「はいっ! 下は十歳から上は腰の曲がったお年寄りまで、安心してお使いになれます。女神印の最高級兵器です! 今なら保証期間3年。クーリングオフも承っております」


 まあ、大した戦闘はしないけどね。

 でもやっぱり人は死んじゃうよね……


 この時代、ドンパチばかり。

 自衛の戦争は仕方ない。

 勘弁して、みんな。




 ◇ ◇ ◇ ◇


 現在、賢いヒロイン中編コンテスト参加中です。

 11話31000文字作品です。

 応援よろしくお願いしますm(__)m


 物語の先が気になった、そこのおねいさん、おに~さん。

 ここはひとつ景気よく『ぱ~ん!』とフォロー&★をタップorクリックしてくださ~い! 

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る