10/15 全部傑作! おすすめのSF小説3選+α



 なんか、いま巷では「SFとは何ぞや」みたいな話が話題になっていると小耳に挟みました。

 僕としても思う所は色々あるんですが、正直この話題はもう過去半世紀にわたって腐れSFオタクども(俺も含む)によって好き勝手に意見表明され続けてきた(「議論されてきた」とは言えない)ことですので、まあそれは横に置いといて。


 それよりも、この世に幾多ある面白いSF小説の中から、「これや!!」という作品を紹介する方がきっと世のため人のためになる!

 と思いますので以下に列挙します。SF全然知らん!! という人のためのリストですので、超有名作も臆面なく入れてるよ!



■「星を継ぐもの」ジェイムズ・P・ホーガン

 いきなりの大本命。これぞSF・オブ・ザ・SF。「SFとは何ぞや」と問われれば「星を継ぐもの」と答えたい。まさに超大傑作。


 ある日、月面で宇宙飛行士の死体が発見された。鑑定によれば、この宇宙飛行士はなんと死後5万年が経過しているという。そんな太古に宇宙飛行士がいるわけない。ひょっとして、これは宇宙人の死体なのでは!? と人々が色めきたったその時、さらに驚くべき事実が判明した。この宇宙飛行士の遺伝子は、あきらかに彼が地球人類であることを示していたのである。

 5万年も前になぜ彼はこんな場所で死んだのか? 5万年前に一体何が起きたのか? 果たして彼は何者なのか? 全ての謎を解き明かすべく、科学者たちによる徹底調査が始まった……!


 というのが、おおまかなあらすじ。

 この時点でもう面白い。


 SFの中でも「科学的な考察の正しさや綿密さ」に重きを置く作品を、特に「ハードSF」と呼ぶことがあります。「星を継ぐもの」はそのハードSFの代表作であり、その意味で、あらゆるSFの中でも最も「サイエンス」フィクションらしい作品のひとつと言えるでしょう。

 この作品には光線銃も超能力も超光速もでてきません。胸躍るアクションやサスペンスとも無縁です。しかし、謎の死体に関する調査と推理によって次々に驚くべき事実が明らかになっていく、その過程がたまらなく刺激的で面白い。ある意味では、ミステリー小説に近い魅力を持っているとも言えるかもしれません。



■「銀河ヒッチハイク・ガイド」ダグラス・アダムス

 ガッチガチのガチSFの次は銀河最高のトンチキSF! 温度差で風邪を引け!! 傑作SFコメディ。


 イギリスの冴えないおっさんアーサー・デントは、自宅取り壊しの危機に直面していた。彼の家はハイウェイ建設用地にかかっていたのである。抗議するアーサー。しかし「この家を取り壊すことは役所の地下室の掲示板に半年も前から貼りだされていた。地方行政に関心のなかった君が悪い」とにべもない。

 ところがその時。突然、空一面に無数のUFOが現れた。「銀河ハイウェイ建設のため、これから地球を破壊する」!

 抗議する地球人。宇宙人が切り返す。「地球を破壊することは、アルファ・ケンタウリの掲示板に半世紀前から貼りだされていた。地方行政に感心のなかった君たちが悪い」

 かくして地球は消滅! 惑星ごと家をなくしたアーサーは、UFOにヒッチハイクして銀河を旅するはめになったのである。


 終始こんな感じで、皮肉の利いた英国ジョークが連発されます。酒でもチビチビやりながら、へろへろに酔っ払った頭で読むのが一番面白い。そんな作品です。


 この作品、イギリスで放送されたラジオドラマが原作なんですが、小説版、テレビドラマ版、映画版と様々にメディア展開されています。小説も面白いんですが、個人的には映画版を見てほしい! めちゃくちゃ出来がいいですし、ギャグがいっそう笑えるように進化しています。ほんと最高。鑑賞するときには、ぜひともビールとピーナッツの準備をお忘れなく。



■短編集「クローム襲撃」ウィリアム・ギブスン

 薄汚れた近未来。進歩しすぎたテクノロジィ。虚しいまでに煌びやかな都市の片隅で、ままならない人生を歩むものたち……その哀しい生き様を描き出すSFサブジャンル「サイバーパンク」の代表作。


 ハッカーが電脳世界にダイブしたり肉体に機械を埋め込んだりという「サイバー」な世界観が市民権を得るきっかけとなった作品のひとつがコレです。もう、とにかく、かっこいい。渋い。


 サイバーパンクというと、とかく退廃した都市やらコンピューター技術の描写やらがイメージされますが、僕としてはサイバーパンクの要諦は「人情」にあると思っています。機械や技術やネットワークによって人間も社会も異形になってしまったけれども、その根っこにある人情から逃れられはしない。恋愛、親子愛、自己顕示欲、満たされない渇望……そうした情念にまみれて足掻き続ける人々の姿を克明に描き出すところに魅力があるんじゃないかと。


 表題作「クローム襲撃」もいいんですが、個人的には「記憶屋ジョニィ」と「冬のマーケット」、そして「ドッグファイト」の3作が白眉と思います。僕はこれらの作品から死ぬほど影響を受けました。ぜひ読んでみてください。



■その他、お薦めしづらい理由がちょっとある作品群

 他にも面白いSFならいっぱい思いつくんですが……少々難点もありまして、胸を張ってオススメしがたいものも多いです。以下にそれらも列挙しておきますので、よかったらどうぞ。


・ちょっと古臭い

「幼年期の終わり」アーサー・C・クラーク

「夏への扉」ロバート・A・ハインライン


・ちょっと長いorちょっとどころじゃなく長い

「ハイペリオン」「ハイペリオンの没落」ダン・シモンズ

「エンダーのゲーム」オースン・スコット・カード


・絶版で電子書籍もない

「銀色の恋人」タニス・リー

「ソフトウェア」ルーディ・ラッカー

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