日記書けません!!

外清内ダク

2023年3月

3/28 レジ袋おつけしときますねー!


「レジ袋おつけしときますねー!」


 絶望である。

 誰だって絶望するはずだ。セブン♪イレブン♪いい気ぶーん♪なんて呑気に歌ってる場合ではない。アパート最寄りの昼のコンビニ。レジに立ついつもの女性。「こちらのレジどうぞー!」と愛想よく誘導され、昼飯の鶏ザーサイ塩焼きそば、おつまみピリ辛白菜漬け、市指定ゴミ袋を詰めた買い物カゴをおいた直後、俺が「あ、袋ください」とドモるのも待たずに彼女はこう言った。


「レジ袋おつけねー!」


 恐怖……!

 俺の脊髄を電流走る……!

 毎日同じ時間に買い物に来る俺……毎回レジ袋を買う俺……背丈が高くて妙に目立つ俺……そう、この事態は必然だった。遅かれ早かれ訪れると決まっていた運命の瞬間とき


 覚えられたっ……!

 店員さんに……顔を……!


 確信した直後、額から湧き出る脂汗。俺は1秒、対人コミュニケーションにおいては致命的に間延びした1秒間を絶句で過ごし、やがて不織布マスクの下の頬を引つらせつつこうあえぐ。


「あっ……え……ナナチキ、ください……」

「はーいナナチキですねー!

 ……あ!

 この市の指定ゴミ袋、現金かnanacoでしか買えないんですよー。別会計にします?」


 こっ……!!

 こいつッッ……!!

 覚えてやがるっ……!! 俺がふだんEdyしか使わないこと……!! 電子マネー……その種類まで……!!


「えっ……あっ……じゃ……大丈夫です、今日は、現金で……」

「いいですかあ? すいませーん、ありがとうございまーす!」




 逃げるように立ち去り、帰りの道すがら、俺は、昼飯とゴミ袋の詰め込まれたレジ袋を握りしめていた。

「優秀な……店員さんだなあ……愛想が良くて、気が利いて……」


 脂汗に濡れた肌に、春先の風はたまらなく……冷たい。

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