第12話 最速の探索者


「バゴーザー。バイクモード」


 白馬のままで配信に映るのはまずいからね。


 ウロちゃんは配信スタートのサインをする。


「ダンジョンライダーさん。今回は投げ銭機能のウルトラチャットも入れましたからね」


 通称ウルチャだ。いくら貰えるか楽しみだね。


 ステータス画面が表示された方がいいからダンジョンの中に入って挨拶しよう。

 ステータス画面はダンジョンとダンジョン市役所イティハーサの中だけしか表示できないからね。


「みなさんこんにちは! ダンジョンライダーです! さっき、ダンジョン市役所で登録をしてきたので新人のE級探索者になりました」


 私のスマホはウロちゃんのカメラと同期。

 スマホには配信画面が表示されていた。


『配信、待ってた!』

『登録おめでとう1号さん!』

『1号さん、おめ』

『え、いまさら新人www』

『S級モンスターを倒しといてE級とかどんだけぇwww』

『流石は1号さんだわ』

『S級モンスター倒す新人は草生える』

『1号強すぎワロタ』


 ははは。

 まぁ、初めて倒したカースフレアドラゴンとかイービルブリザードイーターはS級モンスターだったからな。

 それにしても……。


「この1号って何??」


 ウロちゃんも小首を傾げた。


『スレ見てないの?』

『スレ嫁し』

『スレでそうなってる』

『ネットで話題だよ』

『ヅイッターでもそうなってるよーー』

『バイクライダーが1号。カメラマンが2号だよ』


 おいおいなんだよそれ。

 ってかスレが立っているのか。


「えーーと。今はスマホでネット検索できないんだけど、そのスレでは私が1号でカメラマンが2号って呼ばれてるの?」


『そうそう』

『ライダーだからねw』

『ライダーといえば』

『わかるよね?』


 そういうものなのか……。


 まぁ、ダンジョンライダーとかカメラマンって呼称が長いから1号2号が楽かもね。


「じゃあそれは採用させてもらおうか。2号もいいかな?」


「はい。承知しました1号」


 よし。


「んじゃ改めてはじめよう。探索者になって初めて攻略するのはE級のブラックスライムのダンジョンだね」


 ステータス画面のダンジョン詳細をタップ。


 【ブラックスライムのダンジョン】

 E級ダンジョン。

 攻略平均時間約7時間。


 ふむ。

 平均時間ってことはこれ以上長くなる可能性もあるのか。 

 まぁバゴーザーがあるしな。テントはいらないだろう。


「えーーと、攻略平均時間は約7時間みたいです。まぁ、バゴーザーで駆け抜けるのでどれくらいでクリアできるか楽しんで見ててください」


 そうだ。ダンジョンの地図も出そう。


「バゴーザー! ダンジョンデータ。レベル2!」


 これで最短距離で移動が可能だ。


 さぁ行こう。

 アクセル全開だ!


ギュゥウウウウウウウウウウウウウウン!!


「あーー。なんかモンスターが一杯いるけど構わず轢きます」


ドン!

グチャ!

ゴン!!

ドギャン!!


 やれやれ。

 レベルがまったく上がらないな。


『草www』

『早いwwww』

『やっぱすげぇえw』

『気持ちいい』

『モンスターがゴミのようだ』


チャリーーン!


【狸の 腹鼓はらづつみさんから500円いただきました】


 おお!


「初ウルチャ! ありがとうございます!」


 そのあともチャリーーンという音は続く。


 この音は癖になりそうだな。


 あ、緑の扉。


「ボスルームだね」


 突っ切る。


ドギャン!!


 眼前に見えるはブラックスライム。

 体高は3メートルくらいかな。


 初級だしね。


ドン!!


 うん。

 バイクモードで1発KO。


「魔晶石回収っと」


 バゴーザーの収納ボックスに入れておこう。


『早wwwwwww』

『ちょ! 10分かかってないwww』

『草wwww』

『wwwww』

『早すぎワロタ』


 ドドドドっと地響きが鳴ったかと思うとダンジョンは消滅した。

 

「えーーと。これでダンジョン配信は終わるんだけどさ。探索者の等級を上げるのは同じ等級のダンジョンを3回クリアしないとダメなんだよね。だから、あと2回はE級になるんだ。また配信するからよろしくーー!」


 そう言って配信を終了する。


ひとえさんすごいです! 既に10万再生もされてます! ウルチャは3千円にもなりましたよ!」


「あはは。これは儲けたね」


 うん。楽しいな!

 んじゃ、次行ってみようか。


 再び配信スタート!


ドン!

バン!

ガス!


「はい。クリアね」


 相変わらずレベルが上がらないな。

 魔晶石を回収して次だ。


ドン!!


「はい終了」


 これで3回攻略したな。


『早ぇえええええッ!!』

『気持ちいいw』

『5分42秒でした。ありがとうございました』

『最速の探索者!』


 うん。

 まぁ、コメントは盛り上がってるし、いい感じかな。


「うは! ひとえさん! ウルチャが合計して1万にもなっちゃいました!!」


 ウロちゃんと2人で割るから5千円か。楽しすぎるな。


「チャンネル登録者は3万人を突破しましたよ」


「あはは。なんか順調だね」


「すごい探索者が現れたってヅイッターでは話題になってます!!」


 バイクで駆け抜けただけなんだけどね。


「それじゃあ、一回ダンジョン市役所に報告に帰った方がいいのかな?」


「アプリから昇級の申請ができるみたいですよ?」


「マジか!」


 おお、これは便利だ。

 私のステータスとアプリが同期してるんだな。

 ステータスには攻略したダンジョンが表示されるからアプリを通してイティハーサに情報が行くのか。


ピロン!


「やったD級に昇格した!」


「やりましたね!」


「1時間、かかってないけどね」


「ははは。ひとえさんがすごすぎるんですよ」


「あはは……。バゴーザーが強いだけのような気がする」


「そんなことありませんわ! バイクの操縦技術はひとえさんの力なんですから!」


「ふふふ。あんがと。この調子でガンガン行きたいけどさ。もう昼だし近くのコンビニでご飯でも買おっか」


「はい♡」


 バゴーザーも頭を擦り付けてきた。


「ウマァ」


 ああ、そういえばこの子の魔力の補充も必要なんだった。


「君もお昼ご飯だね」


「ウマ♡」


 ふふふ。

 んじゃ白馬モードにしてコンビニに行こう。

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