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 「ハンカチいれたのか」

 「うっさい! うっさいわ!」

 「野菜も食べろ」

 「うっさい! うっさいわ!」

 「ゲームはもうおしまいだ」

 「うっさい! うっさいわ!」


 きょうもきょうとてうちのチビは反抗期真っ盛りだ。

 まだ四歳だとゆうのにこんなでは先が思いやられる。


 大きな猫目をまんまるにし八重歯を剥きだして喚き散らす。


 虎じゃなくて仔猫だろう。完全に名前負けだ。


 保育園のスモッグをなんとか着せてハンカチちり紙しか入らないような小さなカバンを肩からかけてやる。


 「パパにうるさいとかゆうな」

 「うっさい! うっさいわ!」

 必殺猫パンチがスネに炸裂する。


 77おまえなんか、パパちゃうわ!」


 たしかに。


 オレはチビの父親じゃない。

 チビもオレの子どもでは、ない。


 奥さん(いない)や彼女(いない)の子じゃないし、


 こうのとりがやって来たんでもない。


 拾ったのだ。

 先輩のうちに放置された段ボール箱にいたのを。

 夏のはじめに。


 *


 「忘れ、もの」

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