第16話 満たされない心


マサトと別れてから、私の心は本当に空っぽになってしまった。





マサトの隣は…





私が素直に笑えて、思いっきり泣けて、穏やかに眠れる唯一の場所だった。





誰と居ても、何をしていても、決して満たされることのない心。





行き場をなくしてしまった私の想い。






それでも





【もしかしたら…あれは悪い夢だったんじゃないか?次にマサトに逢えば…いつもみたいに笑ってくれる?抱き締めてくれる?】





そんな淡い期待と




あるかどうかさえわからない微かな望みだけで





私は、マサトの行きそうな場所を…何日もフラフラと彷徨っていた。






彷徨いながら…私は私自身に問いかける。






どうしてこんなに悲しくて虚しいのだろう?






私はいったい何を求めて彷徨っているのだろう?






こうして彷徨い続けたその先に、何があるのだろう?






いったい私は何が欲しくて、何を見つけたいのだろう?






突然訪れた【彼との別れ】を受け止められずにいた。






マサトを探すことだけに頭の中が支配され、受け止められない現実からどうにかして逃避しようとする私の心…。






けれどそれとは裏腹に、否応なしに突きつけられるマサトのいない現実。







現実というものは、いつも残酷で容赦がない。





自ら望み選んだ現実ならば…それはやむを得ないと諦める事もできるのだろう。





でもそれが、自ら望み選んだものではなく…他者から有無を言わさず与えられた現実だったとしても、そこから逃れることはできない。







思い返せば…私と妹を自分たちの都合で産んでおいて





【女の子だから、跡継ぎにはならないからいらない】






そんな理由で虐待し、育児放棄したあの人たちから与えられた現実もそうだった。






まだ幼かった私は、自分の感情に蓋をする事で、身体と心に受けた痛みや悲しみを回避しようとしていたんだろう。






それならば…また蓋をすればいいのか…。






どうせもうマサトはいない。





私が、泣いたり笑ったり…穏やかに過ごせる場所はもうないのだから。






満たされない思いや心というものは、もしかしたら…こんな風にして、自分自身の手で造ってしまうものなのかも知れない。






マサトと別れたあとも、私はパチンコ店での換金のアルバイトは続けていた。






私の体調を心配してくれていた美月さんとは、彼と別れた後も度々会っていた。






美月さんは、私や妹が食べるのに困らないように…料理やそれ以外のこと、たくさん色んなことを教えてくれた。






時々私を見つめる美月さんの目が、とても悲しそうに見えたけど…






自分の感情にまた再度蓋をした私は、そこは敢えて見ないフリをした。

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