第27話

 去年も確かそうだったのだけど、今年もやはり、僕のお盆休みと『ラウレア』の夏季休業は一週間ずれていた。そのため、僕と諒馬が一緒に過ごせる夏休みは、八月第二週の月曜日と火曜日だけだった。

 その二日間に、僕たちは旅行に出かけた。行き先は、僕の故郷から普通電車で一時間半ほどの観光地で、僕は帰省の途中に寄る、という形になった。

 旅行の二日目、それぞれが反対方向の電車に乗る駅に到着してから、僕たちはおみやげ処をぶらついた。

「あっ」

 試食の洋菓子を口に入れたところで、僕は思わず声を上げた。

「どうしたんですか?」

「光輝だ」

 陳列棚を三つ挟んだ向こうにいた光輝も僕に気付いたらしく、驚いたような顔で見つめ返してきた。

「えっ?」

 諒馬が視線をやると、光輝の隣に立っていた、小野と思われる男子が、戸惑いを隠せない様子で、僕たちに小さく会釈をしてきた。

「これって、そうそうできる経験じゃないですよね」

「えっ?」

「叔父さんと甥っ子が、お互いに彼氏連れでばったり出会うなんて」

「あぁ、そうだよな」

 僕たちは顔を見合わせてから、先にこちらへと向かっていた光輝たちを迎えるべく、その場を離れて歩き始めた。

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