第12話 アルさん被害者の会


 フィールド型迷宮ダンジョンは迷路型と違い、階層に分かれているわけではない。それ故に、階層守護者フロアボスが存在しない。


 その代わりなのか、フィールド型には変異体、特殊個体と呼ばれる魔物が存在している。端的に言えばフィールド型における階層守護者フロアボスだろうか。


 共に、希少性が高く、非常に強力な魔物であり、場合によっては探索者たちでレイド戦を行うことだってある。


 俺が戦えば苦戦必須な魔物だっているし、死を覚悟するもの、或いは戦いにすらならないものだっている。


 それくらいまでに、変異体や特殊個体は強い魔物である。──そう、ここに白亜の龍アルビオンさえいなければ。


 ここに、変異体や特殊個体ですら有象無象にする理不尽アルビオンがいなければ。


 こんなことにはなっていたかっただろう。


◇◆◇◆


《続いて、変異体及び、特殊個体討伐のリザルトアナウンスを開始します。》


 変異体、特殊個体討伐を告げるアナウンスが流れる。


コメント

・あ……

・草

・アル様の被害者たちが……

・そっか、アルちゃんの崩壊式で犠牲になった方たちの撃破リザルトが

・あぁー!!そっか、色々なボスたちがあれで死んだのか

・《Celestia》wwwwwww

・哀れなり、ボスたちよ……

・陛下笑笑

・流石に崩壊式くらっちゃあ変異体や特殊個体でも生きられないか

・S級の上積み勢だったら可能性はありそうだけど……



《特殊個体"盲目の深林狼フォレストウルフ"討伐。報酬として【深林狼の魔石】を獲得。》


《変異体"獄燐の黒死犬バーゲスト"討伐。報酬として【黒死犬の魔石】獲得。》


《特殊個体"輝石の亜竜ワイバーン"討伐。報酬として【亜竜の魔石】、【輝石の竜剣】を獲得。》


《特殊個体"不可視の白狼ホワイトウルフ"討伐。報酬として【白狼の魔石】、【不可視の狼皮】を獲得。》


《変異体"岩墜の妖蛇"討伐。報酬として【妖蛇の魔石】、【岩墜の杖】を獲得。》


《特殊個体"赤熱した金属粘魔メタルスライム"討伐。報酬として【金属粘魔の魔石】を獲得。》


《個体名アルビオンが称号[崩壊者]を獲得。》


《以上を持ちまして、討伐リザルトを終了いたします。お疲れ様でした。》



 いや、多いな!!


「いや、多いな!!」


 あ、まって口に出ちゃった。


コメント

・多いな

・六体も居たってマ?

・いや、多いな!!

・でも、報酬は少ないね

・メタルスライムいるじゃん

・魔石だけが大半だな

・メタルスライムに特殊個体なんていたんだな

・案外こんなもんだぞ?

・こいつらが無惨にも散ってった者たちか

・アルちゃん被害者の会結成だな

・それにしても、あんだけの範囲を崩壊させて尚、こんだけしか居ないんだな



「まぁ、変異体や特殊個体って希少だからな。迷宮ダンジョンによっては1.2体しかいないところもあるらしいぞ?だから6体って普通に多い方なんだよな。」


 変異体や、特殊個体はその生まれからして希少である。それ故に、迷宮ダンジョンによっては居ない所なんかもあるらしい。

 ここの迷宮ダンジョンにこんなにも数がいたのは長年攻略されてなかったからなんだろうな。普通、フィールド型迷宮ダンジョンって人気があるからさ。


コメント

・そう考えると6体って多いのか

・へぇそうなんだ

・あ……

・うわ、急にきたな

・でっかいな……

・流石ボスの魔石


「…………」


 唐突に、目の前に巨大な魔石が六つ。

その魔石たちの横には、剣と杖、そしてそれなりの大きさの獣皮が置いてあった。


「急に来るな、討伐報酬……」


 その正体は、さっきの討伐報酬だった。

急にドン!!ときたからびっくりしたわ。


コメント

・ほんと急だよな

・もうちょっとどうにかなんないのか……

・ってか、この大きさの魔石どうやって持ち帰るの?

・マジックバックがあるんじゃないの?

・でも持ってるやつで入るか?だいぶ大きいぞ


「あー確かに、これじゃあ入んないか。空間袋マジックバックに。」


 空間袋マジックバックと呼ばれる魔道具がある。

この魔道具は袋の中が亜空間に繋がっており、そこにいろいろなものを収納し持ち運べるという優れ物であり、迷宮ダンジョン攻略では必須とさえ言われているものである。

探索者となった時に、探索者協会で格安で買えるのだか、この性能では、今ここにある魔石を収納することはできないだろう。


 うーん……最悪、魔石以外のものだけ持って帰るか?もっと良いの買っとかは良かったな。ただなぁ……高いからなあ、あれ。


『む?なら我が持ってゆこうか?これくらいなら楽勝だが。』


 悩んでいるとアルが声をかけてきた。


「ん?アル、持ってけるの?」


『我を誰だと思っている。このくらい出来るに決まっておるだろう。』


 そうゆうと、魔石が置いてある場所の空間に穴が開く、そしてあっさりと魔石が消え失せた。


「……ありがとう、アル。」


『ふん。気にするな。』


コメント

・流石アル様です!!

・さすアル

・万能すぎるだろ

・流石は龍?

・魔石以外のものってどんなのなの?

・↑あ、確かに気になる?


「あーこれ?ちょっと見てみるか。」


 コメントで、魔石以外の討伐報酬がなんなのか知りたいとあったので、【鑑定のルーペ】を空間袋マジックバックから取り出して、見てみる。


「じゃあ、最初は剣から。」


 最初は青く輝きを放つ剣。

それに向かって【鑑定のルーペ】を使用する。


──────

【輝石の竜剣】

 "輝石の亜竜"から作られた直剣。

その剣身は彼の輝石が含まれており、竜鱗の如く頑丈であり、耐久性に優れている。

──────


「耐久性が高いっていう剣か。」


コメント

・竜鱗の如くねぇ

・まぁ、あたりの部類ではあるのか?

・耐久性高いのは便利だからなぁ


「じゃあ、続いてはこの杖。」


 続いて鑑定するのは、先に紫色の宝石がはまっている杖。


─────

【岩墜の杖】

"岩墜の妖蛇"から作られた杖。

杖の先には"岩墜の妖蛇"の瞳が付けられている。

魔力を込めることで、巨大な岩石を生成し、狙った方向へ堕とすことが出来る。

─────


「うわ、なんか使いたくなくなったんだけど」


 え、なに?この先についてる紫色の宝石。これ瞳なの?せっかく、使えそうだなぁって思ってたんだけど!?


コメント

・えぇ……(困惑)

・草

・擬似的に魔法が使える点では強いんだがなぁ

・あの一文いらんかったやろ笑


「最後の毛皮。」


 最後に鑑定するのは、綺麗な白色の毛皮。


─────

【不可視の狼皮】

不可視の白狼の毛皮。

魔力を通すことにより不可視となる。

─────


 試しに、この毛皮に魔力を通してみる。

すると、毛皮が透明になった。


「んー……なんというか、使い所があんまり無くない?」


 正直、透明になる利点がない気がするんだが。


コメント

・んー確かに

・なんか微妙だよな

・それなら防御力が上がるとかの方が良かったよね

・それな


─────────────

あとがき

アル様被害者の会は現状六体で構成されてます。

また増えるだろうなぁ……


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