第10話 《天上の魔王》セレスティア


コメント

・待機

・待機ぃぃ

・待機、人多いね

・待機。十万越えマジか

・待機です

・待機がゲシュタルト崩壊した


「アル、配信始めるぞ。」


 アルにそう声をかけ、ちらりと待機枠を見る。うわぁ……凄い。同接がえげつない事になってるじゃん。まぁ、あの広がり方みたら案外当然ちゃん当然か?


 それはともかく、アルも準備オッケーらしいから配信を開始する。


「あ、あ、見えてる?大丈夫そう?」


コメント

・きたぁぁぁ!!

・きちゃあ!!

・初見

・龍がいると聞いて

・ちょ笑笑アルちゃん笑

・アルちゃんwww

・草

・引っ付いてんなぁ笑笑


「さっきからずっとこうなんだよな。頭に引っ付いて離れない。」


『別に嫌などと言われてないからな。たまにはこういうのも良いだろう?』


 俺の頭の上からアルの声。

アルは今、小さくなって俺の頭の上にちょこんと乗っている。

 なんか気に入ったらしい。


コメント

・仲良いなぁ

・イチャイチャしないでもろて

・草

・うーん笑笑

・そういや、今日は何処のダンジョンなん?

・見た感じ今回はフィールド型か


「いや、まぁそうだけどさ……ん?あぁ迷宮ダンジョン?今日は第563番迷宮ダンジョン。うん、そうだよフィールド型。」


 迷宮ダンジョンには迷路型迷宮ダンジョンの他に、フィールド型迷宮ダンジョンと呼ばれるものが存在する。

 

 そこは一種の別世界。

 

 例えば、それは地平の彼方まで続く大草原。

 

 例えば、それは灼熱しゃくねつ満ちる火山地帯。


 例えば、それは永遠とわに吹雪く極寒の氷雪地帯。


 例えば、それは天空に浮かびし幾千もの島々。


 世界そのものが変わっている迷宮ダンジョンのことをフィールド型迷宮ダンジョンと呼んでいる。


 そして、俺が今いる迷宮ダンジョンもフィールド型だ。


 目の前には、鬱蒼うっそうと広がる幾千のも木々。


 上を見れば、雲ひとつない青々とした空。


 俺が今いるのは樹海だった。


コメント

・マジで周り木ばっかだな

・樹海か

・あぁ、あそこかぁ

・有識者説明求む

・うっ……嫌な思い出が……

・何でフィールド型にしたん?

・第563番ダンジョン。別名『帰らずの樹海』

C級ダンジョンではあるが、出てくる魔物の強さはD級レベル。このダンジョンはとても迷いやすい。過去に数多の行方不明者をだした。それ故に、C級となっている。別名の由来もそこから。現在では挑む人はごく僅かであり、旨味も少ないことからフィールド型ではあるものの不人気ダンジョンとなっている。

・説明サンキュー

・お、説明感謝

・ここ本当迷うんだよなぁ

・一時期ニュースにもなってたとこか

・何でここきたん?


 コメントでもある通り、ここは凄い迷うらしい。それで遭難した人も数知れず。ここ入る時、協会の人に気をつけて下さいって言われたからね。


「ここにきた理由?人が少ないからね。まぁほぼ居ないらしいけど。」


コメント

・今、マジで有名になってるもんね

・人が大勢いるところだと大騒ぎになるか

・絶賛有名になってる途中だからな笑


「まぁ、それもそうなんだけど、一番の理由は巻き込まないためだな。」


コメント

・巻き込まない?

・どうゆうこと?

・何かやるの?

・まさか……アルちゃん?


「いや、さ?こないだの配信の後、アルの実力が知りたいって人が多くてさ。アルと話してじゃあ見せようかってなったんだよ。ただ、周りに与える影響がデカい可能性があるからね。極力人がいないところでやろうと思ってさ。だから探して、人が居ないであろうここにした。」


コメント

・え、アルさんの実力見れるのか!?

・マジか

・気になってたんだよな、正直

・《Celestia》わたしに連絡してくれれば場所くらい貸したぞ

・龍の戦いみれるとかまじ!?

・ふぁ!?

・陛下!?

・ちょっ!!ナンデ!?ナンデ!?

・世界最強さん!?

・陛下だと!?

・うっそだろ……陛下見てんのか


「えっ!?陛下!?何で見てんの!?」


コメント

・《Celestia》別にわたしがみて何が悪い。龍だぞ?見ないはずかないだろう?


 コメント欄や、俺が陛下と呼んでる人物。


 その名はセレスティア・フォルセティ。


 二つ名《天上の魔王》

 

 通称"陛下"。


 長い歴史の中、世界で数えるほどしかいない龍殺しの一人であり、世界最強とまで言われている人物だ。


『今、コメントした奴が昨日言っていた陛下とやらか。』


「ああ、うんそうだよ。」


コメント

・陛下が観にくるとは予想外

・龍がいる配信に龍殺しが観にきてるのか……

・《Celestia》おや?わたしのことを知っているとは光栄だね。


『昨日ちらりとな、龍樹の口から聞いた。龍殺しを成したものとな。』


「いや、まぁちょっと話題にね?話の流れ的に出たというか。」


 存在強度についての話で少し出たからな。陛下の話題。その後ちらっと聞かれたんだよね。陛下と言うのは何者だって。


「ま、この話は一旦終わり、陛下も何かあるんなら連絡して欲しい。で、話戻るけど、アルの力を見せようと思ってね。」


コメント

・待ってた!!

・何やんの?


『何かやって欲しいものがあれば聞くが?』


コメント

・え、まじ?

・龍魔法

・逆に何が出来んの?

・何が出来るか知らんのだが

・《Celestia》崩壊式できるか?

・概念干渉は?


『崩壊式か。出来るぞ。』


コメント

・崩壊式できんの!?

・え、まじ崩壊式!?

・あれ生で見れんの!?

・存在は知ってたけどまさか観れるとは……


『龍樹、下がっていろ。』


 アルは俺にそう言うと、身体を元の姿に戻し、10メートル越えの大きさへ。


 そのまま天高く飛び立ち、空に向かって咆哮。


『────!!』


 空気を揺らし、大地を轟かせるようなとてつもない咆哮。


 次の瞬間。



 世界が崩壊した。



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