困惑のねむりめ、そしてカニ

 昨晩は「心霊グラインドハウス〜ねむりめ〜」同時再生をした。

「ねむりめ」とは何かというと、エンタメ〜テレで放送されたである。


 3年前、同じ枠で「心霊マスターテープ」というドラマをやっていた。監督は寺内康太郎。実在する心霊ドキュメンタリーのスタッフがレーベルを超えて集結し、「最初の心霊ドキュメンタリー」を探すというフェイクドキュメンタリードラマである。

 これが非常に面白い。「心霊アベンジャーズ」と呼ばれるように、監死カメラ、Not Found、心霊パンデミック、心霊玉手匣、心霊闇動画…などの(知らない人には何を言ってるやらだが、知ってる人からすれば)錚々たるメンバーが一堂に会する。起こる現象や調査の過程もリアルでありながら、「フィクションである」と銘打っている強みもきちんと生かして、人死にやありえない現象も取り入れていく。さらに骨となるメッセージが「心霊をエンタメとして扱う/楽しむこととは?」というメタ的なもので、楽しみながらもその作り手の内省的で誠実な問いかけに、心霊ドキュメンタリーファンとして心を打たれる。


 翌年にほぼ同じ座組で「心霊マスターテープ2」が(これにはフェイクドキュメンタリーホラー「戦慄怪奇ファイル コワすぎ!」の登場人物に酷似した「ヤバすぎ!」という心霊ドキュメンタリーチームが登場する)、さらに次の年には過去2作に出演していた谷口猛監督による青春ダークフェイクドキュメンタリーホラー「心霊マスターテープ -EYE-」が放送された。それぞれ趣は違えど、恐怖とフェイクドキュメンタリー、そして「心霊ドキュメンタリーを撮ること」に対して誠実な良作であった。


「ねむりめ」もこの流れの新作……だと思っていたし、実際、企画としては「心マス」と同じ企画なのだと思う。監督は「心マス」「心マス2」で重要な役回りを演じた岩澤宏樹。実は岩澤作品を見たことがなく(大好きな「呪われた心霊動画XXXシリーズに携わっているらしいのだがノンクレジットである)、「心マス」作中の印象で理知的でクールな作品を作ってくるのかと思っていた。

 のだが。


 蓋を開けてみると、なんというか……ちょっと自分の知らないノリの作品だった。

 アニメっぽいというかラノベっぽいというか……キャラがキャラキャラしいというか……。

 POVではあるが、フェイクドキュメンタリーではない。いや、ある意味フェイクドキュメンタリーとは言えるのかもしれないが、それにしては整合性がなさすぎる。怒涛の展開、何も説明されないのに納得して話を進める登場人物、置いていかれる視聴者おれたち


 いや、面白くないというわけではない、わけではないが、うーん……わからない。ノリがわからないし、人物の動機も弱い気がする。理屈も通ってない気がする。

 やっぱり特にノリが難しくて、心霊ドキュメンタリーやフェイクドキュメンタリーホラーを見てきた人間としては「オカルト案件を専門とする探偵事務所」とか「裾にパイピングがあるフリルがついた黒いマントを着た霊能者」とかは、とにかく飲み込みにくいのだ。

 全6話、約2時間半。ひたすらに困惑した時間だった。


 見終わったあとスペースで困惑を共有できたのが唯一の救いである。一緒に見てくれたドントさん、大塚さん、ぼんちゃさん、本当にありがとう……!



 さて話は変わって、今日は旅行に来ている。大阪で一泊。夜は忙しくて書けないかもと思い、今日記を書いている。

 ホテルにチェックインする前に道頓堀をちょっと歩いた。

 ぶらぶらしていると定番の観光スポットが目に入る。かに道楽だ。

 そのでっけーカニを見て、わたしはまた「ねむりめ」を思い出していた。甲殻類アレルギーの登場人物が見る、巨大ガニのお化けに襲われる幻覚のシーンを。

 思い出して、やっぱりまた困惑したのだった。

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