第23話「三尸一体の時」

 とある霧深い夜の事。


『キキキ!』『クキキ!』『ピキャーッ!』


 霧の中を気味の悪い発光体が飛び交う。それらは翅を持った昆虫で、餌を求めて牙を鳴らして羽ばたいている。


『フンッ!』


 しかし、相手は爆炎使いの天道てんどう 説子せつこ。集る傍から焼かれて散って行く。まるで勝ち目が無かった。

 ちなみに、香理かり 里桜りおも居るのだが、相変わらず後方支援者面で傍観している。手を出すまでもないので、問題は無いが。


『ブブブブブ……!』


 すると、逐次撃破されていた蟲たちが攻撃を止め、一ヶ所に集まった末、合体して一体の魔物となった。


「『テントウムシ?』」


 それは、巨大なテントウムシだった。黄金に輝く甲殻を持ち、目玉模様(模様と言いつつ動いているので本当に目玉かもしれない)を背中に刻んでいる。

 だが、テントウムシそのままかと言われるとそうでもなく、中脚と後脚が野太く長い。形態的に腹を浮かせた逆立ちのような態勢を取れると思われる。

 さらに、口器が限りなくエグい形をしており、獲物の肉を簡単に引き裂きそうな禍々しい顎が連なっている。ただし、どちらかと言うと切れ味に特化した形状なので、おそらく硬い殻を持つ外骨格ではなく、表皮が軟らかい内骨格の動物を対象にしているのだろう。

 そう、人間を丸齧りしそうなデザインだ。流石は妖怪、カニバリズム全開だった。


「おい、何だこいつは?」

『「常元虫つねもとむし」じゃねぇかな。背中に目玉あるし』

「どんな奴よ?」

『人の妄執が形になった蟲だよ』


 「常元虫つねもとむし」とは、殺された人間の魂が妖蟲となって羽化した妖怪である。

 その昔、天将の兵乱をきっかけとして落ち武者となり、盗賊に身を窶した「南蛇井源太左衛門」という男が居たが、後に改心して「常元」という僧侶となって、人々の為に尽くした。

 しかし、慶長五年のある時、過去の罪状により逮捕され、見せしめとして磔にされた上で斬首された。死に際に常元は常世を呪い、翌年から“人間が後ろ手に縛られたような姿”をした奇怪な虫が現れ、周辺地域に数々の不幸を齎すようになったという。

 むろん、妖怪と言えど生物なので、誰かの恨みの化身、という訳ではない。

 おそらく、あの飛び交っていた蟲たちが常元蟲の成体であり、今の姿は外敵排除の戦闘形態(群体)なのだろう。何れにせよ、ロクでもない害虫だ。



◆『分類及び種族名称:蟲毒超獣=常元虫』

◆『弱点:腹袋』



『プシュシュアアアッ!』


 と、常元虫が黄色い体液を前脚から出しながら、土を高速で捏ね繰り回して、大きな泥団子を作り上げた。あの黄色い液で泥を溶かして、前脚を使って球体にしているらしい。


『プキャキャキャ!』

「『おっとぉっ!?』」


 そして、徐に後ろ向きになったかと思うと、フンコロガシのように泥玉を転がして来た。だから後ろの脚が長かったのか。ポージングとシチュエーションのせいで、どうしてもウ○コに見えてしまうのは仕方ないだろう。


『ピキラァッ!』

『Uターンして来るな! つーか、ボクの傍に近寄るなぁーっ!』


 しかも、避けられたと見るや、車顔負けのドリフトで方向転換し、執拗に泥まみれにしようとしてくる。


『このクソ虫がぁあああっ!』


 説子、怒りのバーニング。



 ――――――パシィィン!



『何だと!? ……シビレバビデブーッ!』

『ピキャアアッ!』


 だが、常元虫は泥玉を壁にしつつ分散、回避してから説子の背後で再集結して、溶解液とは別の麻痺液を口から発射した。諸に食らった説子が、ビリビリと情けないアヘ顔を晒す。


『ピキキキキキッ!』『アン♪』


 さらに、常元虫は彼女ごと泥をこねて、そのまま封印してしまった。麻痺で動けず溶解液でドロドロにされるとは、哀れな最期だ。遺言が『アン♪』とか、酷過ぎる……。


「おや、死んだ」


 里桜の方が遥かに酷かった。


「仕方ないな、掛かって来なさーい」

『ピキュァァン!』


 里桜と常元虫が対峙する。


『キキキキキ!』


 常元虫が大きく後方に距離を取り、泥団子を作り始めた。僅か数秒の早業だ。


「せい」

『キュァッ!?』


 しかし、里桜が手裏剣を投げるようにエネルギー弾を発射した為、中断させられてしまう。一撃で大ダメージを受けるような物では無いが、怯む程度の威力はあり、更なる追撃が怖いので、避けざるを得ないのである。とは言え、霧のように実体を失くせる常元虫にとって、躱すのは難しくない。

 そう、躱すだけならば。

 そして、この瞬間に勝負は決まったも同然であった。


「せい、せい、せい」

『ピキキャキャッ!?』


 分散と再結合で高速回避する常元虫を、里桜の手裏剣シュッシュが襲う。溜め動作が殆ど無い為、連射が利くのだ。その上、常元虫の移動や予備動作よりも早く、攻撃を受け切る耐久力もない。

 つまり、常元虫に出来る事は、甘んじて里桜に蹂躙されるしかないのである。


「せい、てい、はい、そい、ほい、とい、もい、かい、ぺい、さい、じゃい」

『ピキョキキ!? アキャキャキャ!? ヒャブキャイ!? キャキャミギィッ!』


 爆ぜる花火、踊る虫けら。これぞ虐殺、殺戮機械キリングマシーンだ。手裏剣botと言っても良いだろう。


「ドォラァッ!」


 さらに、疲れて動けなくなった常元虫に、里桜の左目からビームが発射される。


『プキョァアアアゥ……!』


 止めを刺された常元虫は光の雫となって弾け、同時に霧も晴れた。これにて、今回の依頼は完了である。


「おーい、死んでるかー?」

「死んでたら返事はしないだろ……」


 説子も普通に無事だ。後は屋上に帰るだけ。


『………………』


 そんな二人を、誰かが見ていた。


 ◆◆◆◆◆◆


 ここは閻魔県要衣市古角町、峠高校の屋上、里桜の研究所。


「それでは、第一回屋上会議を始めたいと思いまーす」

「「「『えー』」」」『ビバー』『いぇ~い』


 そして、本日は屋上メンバー(里桜、説子、鳴女、富雄、悦子、ビバルディ、祢々子)による会議である。過半数が反対けど、気にしたら負け。


「……つーか、急に何だよ」

「いやさぁ、最近、妖怪多過ぎない?」

「確かに多いな」


 しかも、四国だの大阪だの、果てはお隣の中国だのと、東北地方外の妖怪がやたらと多い。偶然の可能性もあるが、ここは誰かが意図的に持ち込んだと判断すべきだろう。

 問題は誰が、どうして流入させているのか、だ。少なくとも、妖怪なんぞを利用する辺り、真面な目的ではあるまい。


「死者を操ったり、バロウギツネを狐の嫁入りで援護した事を鑑みるに、犯人は妖狐の類だと思います」

「おっ、流石は富雄、無駄に推理力ある」

「無駄って言わないでくれる?」


 富雄の言う通りなら、確かに犯人は妖狐の可能性が高いだろう。


『でも、妖狐ぐらいなら、二人なら余裕なんじゃな~い?』

『ビバビ~』

『そやな~、狐さん可愛いな~』


 こいつら、楽観的過ぎる。お茶でも出してなさい。


「じゃあ何だ、犯人探しでもあるのか?」

「いいや?」

「しねぇのかよ……」

「これだけ隠れるのが上手い奴を炙り出そうとしても引っ掛からないだろうし、何より現状の目的が不明だ。泳がせている方が面白そうだしな」

「つまり、気には留めておけ、って事か?」

「そういう事だな」


 それ、会議開く意味ある?


《メ~ルが~、来てるよ~ん♪》


 と、議会の最中にディヴァ子から依頼の報せが。いやはや、本当に妖怪の数が多い。


「……よし、会議終わり!」

「早っ!」

「依頼だからしかたない!」


 さらに、里桜が無理矢理に終わらせてしまった為、会議はお開きとなった。


「……あからさま過ぎるだろ」


 ◆◆◆◆◆◆


 所変わって、峠高校の保健室。


「母が病気になりました」

「「病院行け」」

「いや、ちゃんと聞いてくれます!? 病院に行ってどうにかなるなら、依頼する訳無いでしょ!」


 いきなり塩対応とか酷過ぎる。


「……まぁ、冗談はさておき、依頼の内容を聞こうか」

「ちゃんと昼休みが終わったら戻って下さいよ~」「保健室の利用も程々にお願いしますね~」

「「「は~い」」」


 という事で、語り出す依頼者――――――三城和みきわ 居歌おるか

 彼女は母親と二人暮らしの母子家庭なのだが、数週間前から母親の具合が悪くなり、日毎に衰弱して行っているのだという。

 むろん、病院には行ったが、原因が全く見当付かず、その間も母親は弱って行くばかり。ほとほと困り果てた居歌は、藁にも縋る思いで依頼の手紙を出した、という訳だ。


「ちなみに、何の心当たりも無いのか? 些細な事でも良いんだが」

「うーんと……精々、親戚から貰った古米を二人で消化してたくらい、かな?」

「「どう考えてもそれが原因だろ」」

「ええっ、いや、だって……MRIでさえ何も見付からなかったんですよ!? 気付く訳ないじゃないですか!」

「「馬鹿め」」

「ストレートな悪口!」


 一般人に里桜たちの感覚を共有させるのは酷な気がする。


「さて、説子……何かヒットしたかね?」

「ああ。穀物に潜む妖怪……「三尸さんし」だな」


 「三尸」とは、元は中国に出身を持つ、奇怪な蟲である。

 人が生まれた時から憑いているとも、穀物を媒介に寄生するとも言われており、宿主に様々な障害を生じさせ、殺してしまう、所謂「疫病神」の仲間だ。人体を抜け出すと鬼のような成体となるらしい。


「とりあえず、実際に患者の容体を診てみるとしようかね」


 という事で、レッツ居歌宅。


「結構良い家住んでるじゃん」


 居歌の家は、そこそこ良いお屋敷だった。和式の庭園付きの一戸建てなんて贅沢な。座敷童子とか居そう。


『あ、里桜だ』


 呵責童子が居た。大丈夫か、この家?


『間借りしてるだけだから、直ぐに居なくなるよ』

「あっそう……」


 居歌の母親が病気なの、こいつのせいじゃない?

 まぁ、そんな事はさて置き、母親の様子を診てみよう。


「お母さんは寝室に居ます」

「どれどれ……う~わぁ~」


 そして、拝見した居歌の母親は、大分悲惨な事に為っていた。


「うぅぅ……」

「まるで餓鬼だな」


 全身がガリガリに痩せ細り、腹だけがボコりと膨らんでいる。腹水がタップリ溜まっているに違いない。これで異常が無いと言われても信じ難いが、医学的には皆目見当が付かないというのだから驚きである。


「日本住血吸虫症に似ているが……違うんだろうな」

「あらゆる検査を掻い潜ってるんだから、只の寄生虫じゃないんだろうね」


 日本住血吸虫とは、かつて「地方病」として恐れられた、寄生虫の一種だ。野生下では主にミヤイリガイ(地方固有種)に潜伏しており、水を介して皮膚から侵入し感染する。

 その後、肝臓の門脈付近に移動して成体となって、血流を遡って消化管の細血管に至ると産卵。卵が血管を塞栓する為、周囲の粘膜組織が壊死し、卵は壊死組織諸共に消化管内に零れ落ち、消化器を犯して行く。

 すると、感染者は肝硬変を引き起こし、痩せ衰えた末に腹水で腹を膨張させ、最後は寄生虫の卵が脳や血管に詰まって死んでしまう。

 中間宿主であるミヤイリガイが地方固有種なので被害こそ局所的だが、一度感染するとほぼ助からない、原因不明の風土病と恐れられていた。

 だが、時代が明治に移行すると迷信を迷信のまま終わらせないよう科学のメスが入り、約百年にも及ぶ努力の末、宿主のミヤイリガイ諸共ほぼ絶滅させる事に成功したのだ。その悪戦苦闘ぶりは、記事にするだけでも秀逸な読み物と化す程である。

 しかし、今目の前に同じような症状を及ぼしつつも科学のメスを掻い潜る、恐ろしい病魔が再び現れた。これは科学者として、見逃す訳にはいかない。ある意味、オカルトからの挑戦状と言える。


「さて、どうした物かね……」


 里桜の科学力は、それこそ地方病を撲滅した当時とは比べ物にならないくらい発達しているが、最新の技術を介したとしても、おそらくは見付からないだろう。

 何故なら、相手は本能で動く寄生虫ではなく、知恵も悪意もある妖怪なのだから。


「やっぱり捌くのが一番でしょ~」

「ぐげぁああああああああああ!」

「ちょっとぉおおおおおおおお!?」


 その結果がこれだよ!

 里桜は一瞬だけ考えた後、何の躊躇もなく居歌の母に腕を突き刺し、お腹の中身をグリグリし始めた。居歌が止めようとするが、知った事じゃない。


「そいやぁあああああっ!」

「内臓ぉおおおおおおっ!?」


 さらに、肝臓や胃袋、大小腸など、呼吸器官を除く大体全部の内臓を引っこ抜いてしまった。その上、投げ方が超乱雑。まさにホルモンのような扱いだ。


「あ、あんた、何て事すんのよぉ!」

「まーまー、落ち着いて、あのホルモンを見てみなさいな」

「えっ……?」


 怒り心頭で里桜に掴み掛る居歌だったが、至極冷静に返されたので、思わず振り返る。


『ミギャアアアアアアアッ!』

「きゃああああああああっ!?」


 そこにあったのは、内臓などではなかった。初めこそそれっぽい姿形をしていたが、ビチビチとうねり蠢いた末に、三匹の奇怪な蟲へと変じる。


「な、何よ、こいつらは!?」

『こいつらが「三尸」だよ』


 と、驚く居歌に説子が静かに告げる。よくよく見れば、知らぬ間に戦闘態勢に入っており、里桜がどういう行動に出るのか分かっていたようである。


「やっぱり、食った臓器に・・・・・・化けてたか・・・・・


 そう、居歌の母の内臓は、その殆どが三尸に食われ、置き換わって・・・・・・いたのだ。どうりで見付からない筈である。人間の目を・・・・・誤魔化す為の・・・・・・擬態を取って・・・・・・いたのだから・・・・・・


「さて、枯れた尾花はどうする?」

『キチチチ……ピキァアアアッ! ――――――三尸合体、「しょうけら」! 「下尸」!』


 すると、三体の虫けらたちが一つに重なり、人間大の妖怪となった。

 見た目は白と黒のストライプ模様をしたアーマーで身を包んだ少女だが、強いて言うなら全体的に刺々しく、ハンマーの如く野太い腕を持ち、頭に牛の角を生やした、ミノタウロスに近い姿をしている。


「これが三尸の戦闘形態って訳だ」

『なるほど「しょうけら」か……』


 「しょうけら」とは「精螻蛄」と書き、その名の通り螻蛄の化け物である。天窓などの光が漏れる場所に群がり、中の人間を取って食おうとする、ストレートに凶暴な妖怪だ。

 元々は三尸が身体から抜け出さない為の呪文でしかなかったが、何時しかそれ自体が妖怪の名前となったという、鵺と似た経歴を持っており、現状を見る限りは“三尸が身体から抜け出した姿がしょうけら”と判断すべきだろう。昆虫を始めとした節足動物は奇妙な生態を有する種族が多いので、何ら不思議ではない。



◆『分類及び種族名称:変形超獣=しょうけら』

◆『弱点:頭部』



「とりあえず、そいつを連れて下がってな」

「は、はい……!」「うぅぅ……」


 一先ず、足手纏いを下がらせる。一応、傷口は塞いでおいたので、後で臓器移植でもしてやれば良いだろう。


『食らえ、「精霊風しょうろうかぜ」!』


 と、しょうけらが両手を突き合わせて禍々しい疾風を巻き起こした。螻蛄は鳴く虫なので、衝撃波の一種であろう。


「『シッ!』」


 だが、予備動作が大き目だったので、里桜たちは割と余裕を持って回避出来た。


『ハァアアアアアアアッ!』

「おっと!」「こりゃ凄い」


 しかし、それがどうしたとばかりに、しょうけらがアームハンマーを繰り出す。その威力は人間大とは思えない程に凄まじく、パンチ一発で家を崩壊させてしまった。同じ大きさなら鵺の数倍のパワーがありそうだ。


『「魔風波」!』

「うぉあぁっ!?」


 そして、空中へ退避した説子目掛けて両腕をゴムのように伸ばして捕らえ、乱雑に振り回しながら衝撃波を当てて吹き飛ばした。ついでに口から溶解液を発射し、錐揉みしている説子を追撃する。


「フンッ!」

『散逸ッ!』


 その隙に里桜が攻撃を試みるが、三尸に分離して回避し、別の場所で再構成した。常元虫とは比べ物にならない素早さである。


『三位一体! 「中尸」!』

「いや、何か形が違くない?」


 しかも、さっきと姿が変わっており、今度は白を基調とした細身の狼男に近い形態だ。如何にも素早く動きそうだが、


『シャアアアアッ!』

「速っ!」


 本当にスピードスターだった。俊足から繰り出される鋭い鈎爪の攻撃は、白い残光を描く程の速さである。その上、身体をドリルのように回転させ、反撃の芽を摘みながら突っ込んでくるので質が悪い。


『ゴヴォオオオオッ!』

『散逸!』


 溶解液を中和した説子の熱線も当たらなかった。


『三位一体! 「上尸」! ……喰らいやがれ、「疾風炸裂弾」!』

「『ドワォッ!?』」


 さらに、虫っぽさのある魔女の姿に再構築したしょうけらが、魔法のステッキ(たぶん身体の一部)を振るい、ブラックホールが如く全てを引き寄せ炸裂する真空の波動を放ち、里桜と説子を纏めて吹き飛ばした。この2人を前にここまで戦えるとは、中々の強敵と言えるだろう。


『こいつ……っ!』

「――――――下がってろ。こいつは私が殺る。本気でな・・・・

『………………!」


 そんなしょうけらに興味が湧いたのか、怒れる説子を制し、自ら前に出る。


「しょうけらよ。お前と言う一匹の妖怪に敬意を表しよう。全力で殺してやる』


 そして、本当の悪魔が降臨した。面白い生態を見せてくれたしょうけらに対しての、里桜なりの誠意なのかもしれない。しょうけらからすれば余計なお世話だが。


『ガァアアアヴィィアアアアアッ!』

『………………!』


 そんな里桜の有様に、しょうけらは「出たな悪魔竜デーモンズ・ドラゴン!」と言わんばかりに総毛立つ(ただし毛は無い)も、逃げたりはせず、徹底抗戦の構えを取る。こんな化け物相手に背を向けるなど、無駄な足掻きだと悟ったのだろう。



 ――――――キィイイイイイン!



『くっ!』


 里桜の微小化粒子破壊光線を、分離合体で避けるしょうけら。


『ギャヴォオオオオッ!』

『ぐばぁあああああっ!?』


 だが、吐いたまま薙ぎ払う攻撃までは対処し切れず、分解されて光となった。それはズルい……。


『よーし、引き上げるかー」

「いや、お母さんを助けて下さいよ!?」

「えー」

「えーじゃない!」


 その後、里桜たちは引き上げ、居歌は母親を治療して貰い、万事は解決したのだった。めでたしめでたし。




『………………』


 その一部始終を、誰かが見ていた。

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