第二話

 ブッコローをいじるのにも飽きて、抱えているブッコローを覗き込む。間近でみると、さらにおかしな生物だった。

「目、やっぱおかしい。なにこれ」

思わず呟くと、ブッコローが震えた気がした。次の瞬間、あろうことか、人形がしゃべり始めたのだ。

「いや、おかしいは失礼でしょ。しかもさっきからいじくり回して。私をなんだと思ってるんだ。これでも有隣堂の顔として頑張ってるんだから。チャンネル登録者数も20万人突破したのよ? 知ってる?ほとんどブッコローのおかげだから」

えええええ!!怖!!!いきなり喋りだしたので、びっくりして壁に向かってぶん投げてしまった。あと声がちょっと想像してたのと違ってきもい。

「ちょっと、投げるのは、ねえ!投げるのはルール違反でしょうよ。ねえ!」

え、マジでなんなの。でもなんか、横たわったまま慌てているブッコローを見ているとだんだん冷静になってきた。

「ねえブッコロー、前の中の人とも喋ってたの? 」

床に転がしたまま聞くと、ううう、と変な唸り声をあげながら答えてくれた。

「こっちが一方的にしゃべってたからね、もしかしたら通じてなかったかもしれないけど、まあ幻聴が聞こえるとか言って辞めてったからね」

絶対聞こえてたじゃん、お前のせいじゃんとなじると、また、ううう、と唸って黙ってしまった。

 

 ブッコローを起き上がらせて長机に座らせたところで、教育担当が戻ってきた。

「いやいや、お待たせしました。えっと、どこまで話したっけ。ええと、部署の変更届は1年たったら受理されます。で、企画とかは自由に持ち込んでください。質問はありますか? 」

ええ、質問ばかりです。この人形は喋るんですか? と言うわけにもいかず、

「うーん、特にないです」

「じゃあ、今日はもう上がりでいいかな。明日から頑張ってね。お疲れさまでした」

帰るときにふと見たブッコローは、やっぱりこう、ぬぐい切れない気持ち悪さがあるけど、結構可愛かった。愛すべきおじさん的な。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る