えんぴつを背負ったウサギ

ピラフドリア

えんぴつを背負ったウサギ

えんぴつを背負ったウサギ



 山に住むウサギは、今日も大きなえんぴつを背負い、旅をする。山風が耳を揺らし、木々は葉を落とす。


「腹が空いた〜、腹がスいた〜」


 ウサギが川辺を通り関わった時。川のほとりでタヌキが横たわっていた。ウサギはタヌキの側に駆け寄ると、顔を近づける。


「どうしたの?」


「ここ三日間。何も食べていないんだ。何か食べるものをくれないか?」


 タヌキのお腹から虫の鳴き声がする。

 しかし、困った。ウサギも食料を持っていない。そこでウサギは背負っていたえんぴつを使うことにした。


「すいすいのすい」


 ウサギは掛け声と共にえんぴつで地面に、豚汁を描いてみせる。すると、不思議なことに地面に描いた豚汁が、浮かび上がると本物の豚汁へと変身した。

 その光景を見ていたタヌキはわぁっと驚きの声を出す。


「どうやったんだい?」


「このえんぴつでちょちょいと描いただけさ。このえんぴつで描いたものは、本物になるのさ」


「それはおったまげた」


 豚汁を食べさせてもらったタヌキは、えんぴつに興味津々。


「どうだい、一つ。この僕に使わせてくれないかい?」


「このえんぴつを? それはダメだよ。先生との約束だからね」


「先生というと?」


「西の山にいる仙人様さ。僕は修行をして故郷に帰るところなのさ。僕はこのえんぴつを使って、故郷の暮らしを楽にするのさ」


「それはたいそう立派な夢だね。僕も故郷の婆さんに借りを返したい。どうだい、一度きりだ、貸してはくれないかい?」


 根気よく迫ってくるタヌキには、ウサギは渋々えんぴつを貸し出すことにした。しかし、ウサギからえんぴつを受け取ると、タヌキはウサギを置き去りにしてどこかへと走り抜けてしまった。


 一人になったタヌキは、えんぴつを手にすると、


「さて、まだまだ腹が満たせられないな。まずは大きなお肉でも食べようか」


 欲の深いタヌキは、食べられないほど大きなお肉を描く。腹の膨れたタヌキの欲はまだ尽きない。


「腹が減ったら喉が渇いたな。次は大きな水が欲しいな」


 タヌキは自分の身体の数十倍はある水を地面に描く。絵が浮かび上がり、実際の水に変わる。すると、大量の水が山に流れ出した。

 タヌキは水に飲み込まれ、湖が出来上がった。えんぴつも海の底に沈み。

 ウサギはタヌキを見つけられずに手ぶらで故郷に帰った。





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えんぴつを背負ったウサギ ピラフドリア @pirafudoria

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