2023/04/24

2023/04/24


 最近、モバイルシーシャを吸い始めた。


 僕は煙草を吸わない。父親は愛煙家で祖父も吸っていたので家系的には煙草が好きでもおかしくないのだが、「僕が火を使うと絶対何かの事故が起きる」という自己判断で今までやってこなかった。幼少期にライターとか手持ち花火で服を焦がした前科付きだ。

 自意識的には煙草を吸わない自分に愛着めいた者も感じているのだが、それはそれとして煙草そのものに漠然とした憧れがある。ハードボイルド的なものに関する憧れであるとか、たなびく紫煙になんとなく感じる哀愁であるとか、そういう理由だ。もちろん健康に害があるのは理解しているが、それを言うなら酒だってほぼ毒だからさ……。


 ということで、モバイルシーシャを手に入れた。妹(パリピ)からもらったもので、CHILL MISTという商品名らしい。ニコチン・タールが入っておらず、たくさんの種類のフレーバーがある簡易的な電子タバコだ。禁煙パイポ的なやつ。Vapeなどの本格的なものを買う前に、試験的に試してみようと思った。

 フレーバーはミント味で、底面のカラーは紫。充電いらずで300回使えるそうだ。吸うと本体が七色に光る。その機能いる?


 試しに何度か吸ってみる。「正しい吸い方」みたいなものをGoogle検索し、燻らせたり思いっきり吸ってみたり、口の中に煙を溜めてみたりと色々試す。ハンターハンターのモラウの念能力をイメージしてみる。紫煙拳ディープパープル

 喉の奥に溜まる感覚はミントのような清涼感で、甘めのミントガムを思い起こす味だ。ハッカ油のミストみたいな雰囲気がする。吸うたびに焚き火が燃えるようなパチパチ音がするのも良い。原理はわからないけど、なんか雰囲気がオシャレだ。

 ふぅ、と息を吐く。爽やかな空気が肺に戻り、たまに咽せる。薄く伸びて天井に届く細い煙を目で追い、これかぁと思う。確かに、少し心が落ち着く。プラシーボかもしれないが、これがチルの感覚か……。ローファイ・ヒップホップかボサノヴァと一緒に楽しむと雰囲気的にもいい気がする。


 本物のシーシャに比べるとお遊びかもしれないが、これはこれで乙だ。煙を吐きながら、自分が長い間深呼吸をしていなかったことを思い出す。

 リラックス効果の理由は、実は深呼吸かもしれない。

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