第2話



 小学校へ着くと、周りの住民達が避難してきており、現場は大混乱していた。


 怪物を自分達の目で見た者や実際に被害に遭った人々は、非常事態を理解してアノ怪物をどうにかしようと防護壁や武器(バットなど)を準備している。


 一方で流れに任せて避難した人や学校関係者は、である。『そんなのあり得ないだろう。』などと半ば呆れている人さえいる。


 ただ、怪我人が出ているので、無視は出来ずに大半の者が周囲の状況に流されて対処している感じだ。


 しかし、暫くしてから、携帯電話への政府からの緊急連絡が入り、更にテレビやネットで怪物の映像が流れ始めると事態は一変した。



『こんなのマンガの世界じゃないか!』

『まだ信じらんないよ。』

『これから、どうなっちゃうの?』

『俺は勇者になって、モンスターをやっつけるぜ!』

『ラノベの世界だな。スキルとか出て来そう!神よ俺にレアスキルを頼む!』


 などと、至るでザワザワと話し声が聞こえる。


 更にこのタイミングで、地球人達にスキルが授けられたのだ!



「本当にラノベの世界だなぁ……。」


『やっぱり、キターーーーー!火魔法のスキルをゲットだぜ!』

『俺は剣術スキルだ!』

『職業とか無いのか!?』

『どうなってるんだ…』

『何、何、何、何?』


 凄く喜んでいる人、戸惑いを露にしている人など様々であった。


 そして、またまたタイミングが良いのか悪いのか、小学校へ怪物が現れたのだった。こんなの状況なので、緑色の肌の怪物は、ゴブリンであろう…!そうに違いない。


 怪物改めゴブリンは、十数匹の集団となっていた。


 さっき火魔法をゲットしたと騒いでいた若者が、そのゴブリン達の集団へ向かって、魔法を放っていた。


『ファイアーボーーーール!』


 お馴染みのフレーズが聞こえると、その若者の手から野球ボールほどの火の玉が出現して、ゴブリン達を襲った。


 ドガァーーーーン。


 爆音の後にゴブリン達が数匹黒焦げになり、数匹は負傷している。無傷のゴブリンが魔法使いの若手へ棍棒を振り翳して迫る。


 魔法のクールタイムがあるのか、その若者は『ファイアーボール』と連呼しているが、2発目が発動しない。


 ゴブリンの棍棒が魔法使いの若手に直撃してしまう寸前で、棍棒が空中へ飛ばされた。

 そこには、剣術スキルを得ていた若手が木刀を片手に立っていた。そう、彼がゴブリンの棍棒を弾き飛ばしたのだ。


『ありがとう。助かった。』

『いや、お礼より俺が敵を相手にするから魔法を準備してくれ!』

『…ああ、わかった!』


 若手2人は、少し言葉を交わすとゴブリンとの戦闘を開始した。



 このやり取りを見たラノベ好きの若手達が十人以上参戦して、一気に形勢が逆転した。


 10分もするとゴブリン達の姿は無くなった。本当に無くなったのだ。屍だったゴブリン達は、その後に小さな結晶(後に魔石と判明)を残して姿が消えた。


 この後、彼らはチームを組んでこの辺りで拠点を築くのだった。



 因みに俺は、この攻防の様子を少し離れたところで、見守っていた。正直、足が動かなかった。


 何か攻撃系のスキルを取得していれば、参戦していただろうが………いや、それでも見守っていたかもしれない。


 俺の取得したスキルは、だった。ありきたりなスキルでは無いようだが、名前だけだとよく分からないスキルだ。


 剣術や火魔法などのスキルなら、分かりやすいが、って……。



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