隠蔽

「あ、ありがとうございます!!」


桧山カナデと目が合い、俺は帽子を深く被り直した。


あの、おまえが高校時代、散々馬鹿にしてた

ど陰キャの山吹シンジだとバレないことを祈って。


「どーいたしまして、

じゃ!!」


ヒナの手を引き、俺はスタスタとその場を離れた。


「ま、待って...!!その声、

陰キャ君、じゃない、山吹シンジくんでしょ!!!」


半ば、あの、俺だと。

確信したような声が背中に聞こえたが。


俺はヒナの手を取って、

「ヒナ走るぞ」と声を強めた。


ヒナは不思議そうに、


「なんで逃げるのー??」

と尋ねてきたが、

「大人の事情ってやつだ。俺にとって。

あの女は苦手な女なんだ」


「んー、そうかぁ。

じゃあ、走ってあげよう」


だだっ、と。ヒナは。

俺に歩調を合わせて逃げてくれたのだった。


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