第32話 月曜日の朝は。

 起きると、二人の顔が僕を観ていた。


「おはようございます」

「おはよー、和樹さん」


 二人とも嬉しそうな笑顔を浮かべてくれるので、僕も嬉しくなってしまう。

 とはいえだ、


「それで、なんで二人は僕の顔を観ていたんですか?」

「起きたら、その……何というか、昨日のキスのやりとりが気恥ずかし半分、もう一度して欲しい半分で覗いてました」

「私も、いきなりしてくるんだもん。

 味わうことも何もできず、倒れて寝ちゃったし」


 っと二人がそれぞれの言い分を言い合うので、つまりだ、


「おはようのキスをして欲しいと」

「ですです」

「その通りだよ!」


 二人が顔を真っ赤にしながらそれぞれ笑みを浮かべてくる。


「仕方ないなぁ、じゃぁ、真弓さんから。

 真矢ちゃんの見本になるようにしてみましょう」

「はい♡」


 娘に見せつけながらのキスだというのに、真弓さんは貪欲に僕を求めてくる。

 何度も軽いキスを繰り返したのちに、唇を重ね、舌を絡め合う。

 そして唇が重なった状態のまま、口内に侵入してきた真弓さんは僕の歯茎を舐め、内頬を舐めてくる。

 その後、僕も真弓さんに誘われるがまま、同じように口内に侵入し、舌と舌を絡め合わせる。

 そして離れると、唾液のアーチが出来、ベッドに崩れ落ちる。


「……というわけよ、真矢ちゃん。

 でも難しっかー、真矢ちゃんには」


 と、真弓さんの歳に対して幼い見た目に反して挑発的な態度を娘に取る。

 女としての格の差を見せつけようとしているのかもしれない。

 すると、


「ムー!」


 当然に怒りだす真矢ちゃんがやっきになった。

 僕にキスしてくる。

 が、そこまでだ。

 やはり知識や経験値が足りないという部分が大きいだろう。


「そこで舌を絡めるのよ」


 っと笑顔でアドバイスをする真弓さん。

 ちょっと待て、この人、この状況を楽しんで無いか⁈

 娘とはいえ恋敵だぞ⁈


「そして相手の口の中に侵入して、舌を味わいつつ、色んな所を舐めてあげるの」

「むぐぐ、げほげほ」


 と、呼吸できずに真矢ちゃんが離れる。


「むー!

 難しいよー!」

「そりゃ私も何度も男の人と夜を共にしたからだし、いきなりできたらそれこそ驚きですよっと。

 ほら、真矢ちゃん、今日のキスはおしまいにして、学校に行かなきゃ」


 と、真弓さんが時計を指し示す。

 僕も釣られるように観れば……、朝御飯をたべる時間が無かった。


「二人とも行ってらっしゃい」


 そう、ベッドの上で手を振る真弓さんを後にして、それぞれ支度をして飛び出ていくのであった。

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