第3話 応援する?貴方、馬鹿でしょ?

「あ、水無月!」


廊下で、新は茉白とばったり出くわした…と言っても、同じ学校。同じクラス。まぁ、こんなことは稀ではないが…。


「なに?篠原くん」


「牧にはもうスケッチだしたのか?」


「うん。今、だしてきたとこ」


「そうか。でも、水無月が提出遅れるなんてあるんだな」


「…まぁ…そういうこともあるね」


「なんか難しい課題だったっけ?」


「別に。女子と男子はそれぞれ題材が違うし、私が提出に行ったのは、美術部の課題だから」


「あぁ!水無月ってびじゅつぶだったんだ!!」


「美術部をひらがなで言わないで」


「…なぜわかる…」


なんだか、この上なく恥ずかしい。


「何となく…。やっぱりそうだったんだね。篠原くん。篠原くんは本当に想像しやすい性格をしてるね」


「そりゃどうも」


「褒めてる訳でもないんだけど。でもこれ以上言うと、また、馬鹿にするな論争が始まりそうだから、やめておく」


「なんだ…やっぱり馬鹿にする気だったのか…」


「ううん。別に。そんなことない。ただ、重い」


「想い?」


「…誰かを感じているわけじゃない。解りやすく言うと、気が乗らない。の」


「…すまん。訳の変わらない想像をした」


「大丈夫。大体、顔をみればわかるよ。篠原くんは、顔に出やすいから、一生懸命なのも何となくわかる気もするんだ」


「なんだ。俺のこと、励ましてくれてんの?だったら、ノートみせてくれよぉ~…(泣)」


「ん~…ことと次第によっては、赤点を免れる程度にだったら、教えてあげる」


「え!ノート見せてくれんの!?『解答』ノートを!?」


「違う。の。ずるは駄目。ちゃんと勉強しなさい」


「…赤点とるよりましか…。で?何すれば良いの?」


「山本くんに、私と付き合ってる、と言って欲しいの」


「はぁ!!!???」


「出来ない?」


「や…だって…俺は、山本を応援して…」


「…応援?貴方、馬鹿でしょ…」


(でた…馬鹿攻撃…)


「なんで。山本、嫌いなの?」


「嫌いじゃない。でも、好意を持たれるのは困る。何だかこちらの気持ちまで妄想の中で山本くんのものになってるらしくて…」


そう言った茉白の顔は、本当に真剣に、悩んでいる…と言った感じだった。





「実は、今度の日曜に、映画に誘われたの。でも、私は山本くんとお付き合いする気は無いの」


「じゃあ、そう言やーいいじゃん」


「そう簡単じゃないの!」


「なんで?」


「これは、篠原くんと、私だけの秘密よ?絶対誰にも言わないって約束できる?」


「うーん…多分…」


「多分じゃダメ!!絶対って約束して!!じゃなきゃ、この先、篠原くんには絶対勉強についての面倒は見ない!!」


「…でも、それってどうせ、見してくんないってことじゃん…ノート…。それって、俺になんかメリットあんの?」


「うっ………!!じ…じゃあ!!理数数学I、ノートでどう!?」


「のったぁ!!!」


「…」


ちょっと、頼む相手を間違えたかも…と思う茉白だった。

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