第50話(最終話) 報告書
――報告書 初案――
【特命監査報告書】
監査主査:高城小雪
監査対象先:●●●●
監査結果:対象先に関して、業務に支障を及ぼす重要な問題点は認められなかった。
本監査を通じて、対象先は規程の遵守に努め、目標達成に向けた様々なプロセスを整備していることを確認した。現状、対象先が抱えるリスクは●●●●である。リスクは明文化されている部分とされていない部分はあるが、リスク回避を図るべくアセスメントに則り管理している。潜在的に抱える●●●●に関しては、現状評価は出来ないが今後も注視していく必要がある。場合によっては、事業そのものだけでなく、●●●かつ●●●の事態に発展する恐れがあることをここに記す。
監査項目の詳細に関しては二項以降に記載する。
対象先の事業方針は●●●融合に関する体制構築であり、死――
――報告書 監査結果修正――
【特命監査報告書】
監査結果:対象先に関して、業務に支障を及ぼす重要な問題点が認められた。
本監査を通じて、対象先は規程の遵守に努め、目標達成に向けた様々なプロセスを整備していることを確認した――
――報告書 監査結果修正②――
【特命監査報告書】
監査結果:対象先に関して、業務に支障を及ぼす重要な問題点が認められた。
本監査は業務プロセスを可視化できない項目が多く、現状の規定に則った通常の監査手続きでは測れないものがあるため、証跡中心の構成ではなく、網羅的に確認した項目の分析をもとに結論を出している。
――報告書 監査結果修正③――
【特命監査報告書】
監査結果:対象先に関して、業務に支障を及ぼす重要な問題点は認められなかったが、あくまでも確認できる業務プロセスの準拠性に基づく結果である。
この組織が遂行している事業は、可視と不可視の世界(≠現世と幽世 ≠実在と架空 ≠実体と無体)との融合であり、定款および各事業報告書に記載されている内容とは異なる。
事業を遂行する経営陣および社員全てが精神に異常をきたしている者達で構成され、ガバナンスの体を成していない。しかし、表向きの組織は機能しており、その実態は監査において証明できない。また、事業方針や業務プロセスは全てにおいて適切に機能しているが、可視化できない領域があまりにも大きく、世界中に影響を及ぼす相当なリスクとして拡大している。
そのため、本監査は推察・状況分析に依拠するという前提のもと、監査人、いや個人の責務として、事業そのものを即刻廃止して、新しい基準およびガバナンスの構築を急ぐべきであると結論付ける。
上記結論に至った経緯を説明するには、有史以前からの人類および世界の成り立ち、つまり侵略と受容による変革の歴史に関しての説明を行う必要がある。
既にこの組織が遂行している事業によって、社会は後戻りできない変質を遂げようとしている。異常な世界を新たな基準として、死に魅入られた――
了
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