現代魔術の使い方

水城みつは

hello, new world

 世間は何度目かの空前のAIブームになっていた。

何でも答えてくれるAIがローカル動作も可能となったら試してみるしかないだろう。

TB超えの大容量モデルをダウンロードしてうきうきセッティングを済ませた。


「Hey! メルリン、魔術を使えるようにしたいんだけど、どうしたら良い?」

まずはネタになりそうな質問を行った。

しばし、カーソルが点滅する。


『魔術の発動には魔素エーテルが必要です。以下は魔素エーテルを使用した魔術の発動手順です』

おおぉ、フィクション的なことも答えてくれそうだ。


『1.魔素エーテルを体内に取り込みます。

   その際、体内器官チャクラから血管を意識して全身に行き渡るようにすることが重要です。』


いいね、魔素エーテルか。

チャクラなら気やマナ、霊気とかだけども、魔術ならば魔素エーテルはシンプルでわかりやすい。


『2.魔素エーテルを扱うための技術を学びます。

   魔素エーテルは魔力として使用、制御することができます。』


魔素エーテルを基本の物質として、作用して発生する力とか、変換されたのが魔力という概念かな。

魔力の性質とかもあったら面白そうだ。

基本四属性に光と闇とか厨二心がくすぐられる。


『3.魔素エーテルを自分自身で扱えない場合、補助機能を使用することで解決する場合があります。』


―― 魔素エーテルを使用するように補助機能を有効にしますか?


「Yes! 当然イエスだ」

あ、思わず大きく答えてしまった。


―― 魔素エーテルを有効にします……


ブーンとパソコンのファンの音が大きくなる。

「えっ、ちょっ、何か怪しいソフトインストール始まった?」

薄暗い部屋で薄っすらとパソコンが光っている。

ゲーミングPCばりにGPUは積んでいるが、光る仕様ではない。

いや、ケース自体が光っている。

次第に光は広がり、キーボード、モニターまでも光りだした。

そして、机においてあったスマホのディスプレイも点灯し、光を放ちつつメッセージを表示する。


『hello, new world』


 その日、世界は分岐branchした。


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