あとがきという名の恥の上塗り

 以前ギネスブックで世界で一番耳毛が長いおじさんの画像を見た時の衝撃が忘れられない。


 耳から毛が捻り絡まり耳毛が伸びるさまはまるでマジンガーZのツノ。その異様さはとても人体の一部とは思えず、ワタシはとある連想に到った。


「あのおじさんの耳毛ってセミの幼虫に寄生するキノコ『冬虫夏草』っぽくないかい?」


 そう考えて以来、ニョキっと生えた耳毛はワタシにとっての恐怖の対象となった。


 ご迷惑がかかるといけないので絶対にお名前は出せないが、創作論を発表なさっている方の「1000文字でコレコレこういうシチュでの本当に怖い怪談を」というワークが目に留まった。


 ワタシ自身は作家になる気なんてないからよせばいいのにまだKAC気分が抜けきっていないワタシは「頭の体操」気分で気軽に取り組むことに。ふと、「もしも、耳毛が寄生キノコだったら」という例の妄想が頭に浮かんだ。


(以下プライバシー保護のために音声を、じゃなかった使用方言を変更してお伝えしております。)


 そこで同僚に聞いてみた。


「なあ、もしも耳毛が寄生キノコだったら、どえりゃー怖えって思わんか?めちゃんこホラーだがや!」


「どこが怖いねん!そんなんお笑いにしかならへんど!」


「いやあ、めちゃんこ怖えって!」


「アホぬかせ!そんなんホラーになるかい!」


「いや、なるに決まっとるじゃにゃーか」


「ほな書いて見せろや」


「わかった。書いてやるがね!」


 といった売り言葉に買い言葉のやり取り。そのあと、ワタシが気合いを入れて精一杯怖く書いたのが本作品だ


 大急ぎで書いたその自信作を今朝、同僚に読ませたところ最後のところで、


「あははははははは!」


 大笑いされてしまった。


 おかしい。こんなはずじゃないのに。


「怖にゃーのか?」


「こんなんどこが怖いっちゅうねん!ここは笑うトコやろが!」


「ううむ、解せぬ」


「アホか!そんなん、ヴィジュアルを考えろや!ヴィジュアルを。耳から耳毛がもっさもさなんやで!おかしいやん!アホすぎるやん!耳からウーパールーパーのエラみたいに毛ぇがボーボーなんやで、笑うしかないやん」


 ああ、なんて言うことだ!たしかにその状況を想像するに昭和かギリで平成のお笑い番組のコントにしか見えないではないか!


「仮になあ、この話に続きがあってやなあ。寄生耳毛キノコがブワーっと広がってヒトをゾンビ化させて襲うとするで」


「お、おう続編だと!」


 面白そうではないか!


「老若男女、あらゆる年齢層のこのキノコの感染者がやなぁ両方の耳からボーボーに生やした、耳毛をわっさわっさしながら追いかけて来るんやで。どこが怖いっちゅうねん!」


 ダメだ!そんなのどうしても昭和か平成のコントにしか見えん!絶対笑ってしまう。


 おかしい、こんなはずでは・・・・・・


「一番おかしいのは、この耳毛がわっさわさなのをホラーやと感じられるお前の感性やわ!タイトルかて『山姥の耳毛』やろ?どこが怖いっちゅうねん。自分、どう見てもホラーの才能あらへんで!あきらめた方がええんちゃうか」


ぴろ〜ん


 その瞬間、「新しい応援コメントが1件あります」との通知が来た。


 ワタシが恐る恐るそれを開いてみると書いてくださった読者の方はラーメン食べながら爆笑していた。


 絶望した!


 ワタシは己れのホラーの才能の無さに絶望した!


 くっそ〜!二度とホラーなんて書くもんかぁぁぁぁ。


。・゜・(ノД`)・゜・。



 こうして黒い歴史がまた1ページ綴られたのだった。


終わり

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山姥の耳毛 土岐三郎頼芸(ときさぶろうよりのり) @TokiYorinori

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