第20話 焼き尽くせ
先代桃華に言いたいことは、ごめんなさいって謝るくらいなら、その事情もちゃんと話して欲しいということ。
しかし、先代桃華が、私の前々世だというのなら、私が悪いってことなのだが。
私ときたら、どうやら何度生まれ変わっても、どこか抜けているようだ。
「この野郎!!」
早春の門の力を得て復活した炎花の仙術で辺りは火の海になっている。
私は、長牙の背に乗って、その地獄のような風景に息を飲む。
「早春の門が開けば、ちょっとは大きくなると思ったんですけれども、桃華様はちっとも変りませんね」
残念そうな長牙の言葉。
私だって残念だ。
早春の門は、仙女達の五行の力の源であり、私の生命を司る仙力と、長牙の風の力は、早春の門の流してくれる力とは、少し違うらしい。
それでも、門を開いた先から流れ出るエネルギーの塊は、心地よい。
私でもそうなんだから、炎花や蓮華は、まとものそれを感じていることだろう。
次々と蚩尤が撃退されている。
天空に浮かぶ仙女達。
力が戻って、空を飛行することも可能になったのだろう。
あれ? 待って。
とんでもなく燃え広がっているんだけれども。
このままいったら、桃源郷の森林も炎に巻き込まれてしまわない。
「炎花!! これ、どうなさるの?」
蓮華が焦っている。
岩の力も水の力の私達にはない。
何だったら、火を増長させる木の力、風の力。えっと私の生命の力も、この炎をどうやって消すことができるだろう? いや、できない。
「この! 愚か者めが!!!」
突然、天から大瀑布が降り注ぐ。
睡蓮だ。睡蓮が、孫の蕨を連れて天空に仁王立ちしている。
「うわっ、睡蓮だ」
苦虫を噛み潰したような顔を炎花が浮かべる。
苦手なのだろう。
仙術の力的にも、炎花は火の力。睡蓮は水の力。火を打ち消す睡蓮の水の力が苦手なのは、分からなくもない。
「睡蓮様! ありがとうございます!」
蓮華がホッと胸をなでおろす。
炎も蚩尤も、睡蓮が押し流してしまった。
圧倒的な仙女達の力に、あれだけいた蚩尤は、全て討伐されてしまった。
蕨を睡蓮から受け取って、長牙の背に乗せてあげれば、蕨は目を輝かして喜んでくれる。
「うわぁ! すっごいモフモフなのね!」
ふかふかの長牙の背を、蕨が嬉しそうになでる。
くすぐったいようで、長牙が「ひゃあ」。と、小さな悲鳴をあげる。
「桃華様。お話したいことがございます」
そういえば、睡蓮に調べてもらっていたことがあった。
その内容についてだろう。
「早春の門は、炎花と蓮華に一旦任せて、私の家に」
睡蓮の顔は険しい。
何か難しい話なのだろうか。
ちょっと心配になる。
ともかく、睡蓮に促されて、私は、蕨と長牙と一緒に睡蓮の家へと向かった。
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