十一膳目:一月某日(月)我が家の二つのお雑煮


「あけましておめでとうございます。今年も、よろしくお願いします」




 家族五人がリビングに来て今年初の挨拶を交わす、午前八時。

 食卓テーブルには、昨日作った三段重のお節と、連れ合い特製の小鉢に入った角煮、そして、お雑煮が二種類並べられる。


 お節作りは毎年自分が担当。

 そのお節を作る準備段階、『出汁を引く時』が実は自分の中で最も好きな瞬間となっている。

 昆布を水に付けておき、沸騰直前にかつお節を入れて火を止め、ふわりと漂う香りを楽しむ。

 きらきらと黄金色に輝く出汁を見ると毎回心が弾み、さらに今年は、年末の時期には珍しく外が好天していたため、陽光がキッチンの小窓から差し込み、それが出汁を引いた時に現れる湯気を煌めかせる光景まで見ることができた。

 五感全てで温かみを感じることができ、もう作り始める前から全てが完成した気分になってしまう。イカン。


 といった感じでお節を作り始めたのだが、何せ、前日の大掃除で気力、体力、精神力を大幅に使ってしまい、HPはすでに枯渇状態。

 紅白なます、海老のうま煮、筑前煮、伊達巻、栗きんとん、ぶりの照焼き、里芋の含め煮は何とか完成させたが、黒豆、田つくり、数の子、昆布巻きは既製品。

 昔は気合だけで何とか乗り切っていたが、年々衰えを感じるようになり、今では全ての物を手作りする力はゼロ。

 来年手作りする品数は、もっと減ってしまうかもしれない。カナシス。

 せめて見栄えだけはと、お節の中の配置や飾りつけは頑張った。コレデユルシテ。

 

 そして、我が家で出される二種類のお雑煮。

 こちらは、『ばば特製の醤油すまし汁風お雑煮』と『あずき入りのお雑煮』となっている。

 正確に言えば、『ばば特製のお雑煮』がメインで、あずきが食べたい人用に『つぶあん+お餅』がおまけで出される。

 なので、『あずき入りのお雑煮』という表現はやや語弊があるかもしれない。

 しかし、実は自分にとっては、『あずき入りのお雑煮』の方がメイン。

 というか、お雑煮と言えば、この『あずき入りのお雑煮』しか知らなかった。

 実家の父親の出身地では『あずき入りのお雑煮』がお正月に出されることが多く、自分が実家に住んでいた頃、つまり、生まれてから実家を出るまで、ずっとこの『あずき入りのお雑煮』しか食べたことがなかった。

 もちろん、物心ついた頃にはテレビ番組などで『各地のお雑煮特集』といったものを見たことがあったので、知識としては『一般的なお雑煮』が実家のものとはだいぶ違うことは認識していた。

 ただ、そういった『一般的なお雑煮』をまったく食べたことがなかったため、連れ合いと一緒になって初めてのお正月を迎えた時に、『お雑煮を作ってほしい』と言われたらどうしようかと密かに悩んだものだ。

 結局、お雑煮作りは早々に諦め、お節担当は自分、お雑煮担当は義母(ばば)にお願いし、それが現在まで続いている。


 

 さて。そんな感じで、今年もまた二種類のお雑煮を味わう元旦。

 皆様のお正月は、どんなお雑煮が出てくるのでしょうか。



 一年の最初の朝食。

 ほっこり、ほんわか、いただきます。

 今日も、よろしくお願いします。


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