花を植える私、須月ちゃんと共に
学校で帰りぎわ、松村君は私に「須月と会う際昔の思い出の品とかを持っていくといいと思う」と言った。思い出の品、と言っても何が合っただろうと記憶を深く探るとかなり昔の事を思い出した。そうだ、あの花があるじゃん。私は一心にその花を買いに親戚が経営している店へ向かった。
_ありがとう松村君、須月ちゃん、しっかり私と話してくれたよ。
やっぱ頭いいやつは勘もいいんだなぁ。
「そういえば、なんで花やのに木なんてつけたんや、?」
須月ちゃんはざくざくと土をスコップで掘り、若干遠慮がちに聞く。だいぶ呼吸も落ち着いてきたみたいでスラスラと喋れるようになっていた。けれど、まだ目は赤くむくんだままだった。
そういえば、確かに花なのにおかしいなと思った。木?なんで木なんだろ!
全然木っぽくないし、しっかり色も花だし。幼稚園の時につけた名前だから全く思い出せない。私も掘りながら考えた。とりあえず、分かんない、なんて言えないから何か考えなくちゃ!思い出せないより嘘でも理由が合った方がいいでしょ。
「うーん、多分あの時私木とか言葉の意味あんまわかってなかったんだと思うけど…木みたいにおっきくなって育って空まで行って欲しかったんだよね、この花が。ほら、高くなりそうじゃん?…うん、」
ちょっとやっぱ私説明下手かも!
「あはっ、…確かに高くなりそうやなぁ、お空まで」
それを言い終わったあとぷ、と吹き出すように小さく笑う。
「幼稚園の話だからね?」
なんだかイジられた気分でむ、と頬を膨らます。
「わかってるわかってる、」
あはは、と完全に笑う須月ちゃん。
こんな感じ懐いなー、高校になってから須月ちゃんとは妙に距離があったから。もとに戻れて嬉しい。
「ねーぇ、一個聞いていい?」
私は土を彫り終わり、花を周辺の土ごと植木鉢からだそうとしている須月ちゃんに尋ねた。いそがしそうだけど、どうしてもこれだけは聞きたい。
「なんやー?」
動きを止める事なく掘った土の中に、ゆっくりと花を入れ始める。
「須月ちゃんは、グループLINE見ろって誰かに言われたりした?」
さっきまで夢中で花を動かしていた須月ちゃんの体がぴく、と反応する。ちょっと聞くタイミング間違えたかな…?いや、間違えてはないはず!
「田中に…、電話で言われたなぁ、あんたが大変な事になっとるからはよLINE見ろって」
「そっか、ありがとう。他には何か言われてない?」
「田中には、色々言われたわ。ちゃんとミチカを守れとか、一緒に松村を孤立させようとか」
藤田のもとへは委員長が電話をかけて、須月ちゃんのもとへは田中が電話をかける。この二人が協力して松村君を孤立させようとしているのは確かだ。私は昔、田中ちゃんは犯人なわけがないと、犯人なら演技が上手すぎると言ったけど、本当にそうかもしれない。こんなに須月ちゃんや人を騙すのが上手なら、もちろん演技も上手い。彼女は、一体なんなんだろう。委員長と二人で何を企んでいるんだろ。
「…なるほどね、」
険しい顔で須月ちゃんを手伝い、花を土に入れ終わった私。
須月ちゃんは、焦って言った。
「あっ、あ、でももう信じてへんし今はホンマにあの三人にイラついとるからな」
「三人?」
「藤田と委員長と田中や」
「びっくりした、他にまだいるのかと思ったよー」
須月ちゃんは藤田も騙された側だと知らないんだ。
一瞬、まだ別の人がいるのかと思ってかなりびびった。
「んなわけないやろー」
「んはは、だよね〜。お花できたね」
「せやな…これからちゃんと世話するわ」
額を汚れないよう手では無く、腕で拭う。私が汗を腕で拭うと、須月ちゃんも釣られたのか何も異常がないのに私と同じ動きをした。妹みたいで可愛いやっちゃ。
「うん!さて私はそろそろ帰ろーかな」
「おっけー。また、うちん家来てな。その…お花見に」
「もちろん!金曜日は毎回来る!」
「そんな頻繁にきてくれんの…?!」
「当たり前!親友だもん」
いえい、とピースすると嬉しそうに須月ちゃんもピースで返した。
私達の植えたローダンセも心なしか、それに反応するように揺れた気がした。
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