松村君ガイドの私、頑張る。

「先、映画から見よーよ!混んじゃう前にさ!」





よし、頭の中でプランをざっと考えることができた。

私は基本思い付きで行動しちゃうようなタイプだから、今の内に大まかな計画を考えた。初めてこういう遊びをする彼が思いっきり楽しめるように、退屈させない様に頑張る。本当に初めてなのかは知らないけど!!





_松村君は、ただこくりと頷いた。


な、何でか超静かだなぁ〜!


まぁ、返事してくれるだけヨシ!!




…ここの近くの映画館は私自身友達を連れて良く行くから、もう道は覚えてるんだよね。

結構近いし、簡単な道のりで行けるから大好き。


映画館に向かうために、私が一歩進むと松村君もそれに合わせてついてくる。

その姿はヒヨコか、ピクミンのようで私にとって初めて彼が可愛いと思った瞬間だった。松村君に対し、かっくい〜!と弟子が師匠を崇めるように言う事はあっても、こんな気持ちを抱くのは今までになっかった。簡単に言えば、…きゅんとしちゃったって言葉が1番近いかな。




って、何思ってるの私…!?

悟りを開いたかのようにもんもんと、煙かの様に広がって行くこの気持ちを、払拭しようと頭を強く振る。ただ、それでも消すことは出来なくて更にほっぺを叩いてみた。




そしてちら、と後ろを見る。


可愛い。




うん、もうこの気持ちを認めよう_。




勝手に脳内で戦っている間に、私は完全に無意識で映画館まで体を動かしていた。どうやら私の体は優秀な子みたい!!



「よ、よぉ〜し、着いたけど…何観よっかな。私何も決めてないんだよね」


二人でエレベーターを上がっている時、思い出したのが今何の映画が上映しているかわかんないと言う事。



そして、私は一つの映画のポスターが目に入る。




「ね、これ見る?」



「…面白そうだな」




私が指をさした先にあるのは、ホラー映画だった。






実は私ホラー大の大好きなんだよね…!!いつも金曜日に部屋真っ暗にしてみるぐらい。

松村君もこの反応からしてホラー映画は好きなのかな?






_そういう軽い気持ちでこんな映画を見始めたわけだけど。

まだ中盤だし面白いかどうかは分からないけど、一つ言えるのはグロい。ひえ、グロすぎるこれは。R15でもこのグロさならR18はどれぐらいやばいんだろ…。


私はポップコーンをもしゃもしゃ、と食べながら松村君の方を向くと彼もまた、グロいのは苦手だったみたいで、目を閉じ戦慄していた。

わかるよ…松村君、私もここまでスプラッターすぎるホラー映画は初めて見たよ…。



終盤にかかってくると、しっかり伏線回収がされてたりしてなんだかんだ面白い作品だったと思う。ちょっと人が死にまくっててびっくりするところもあったしグロすぎたけど、満足!!星5!!今ならR18のホラーでも見れる気がして来た。



「意外だな…蜂山さんはこういうのが苦手だと勝手に思っていたが」



松村君がふらふらの状態で椅子に座る。もしかしたら、ホラー自体も嫌いだったとか…あるかな。


流石に私は初めてくる友達と見る映画にチョイスを間違えすぎたと思う。松村君ごめん!!



「気持ちわるかったけど、まあまあ面白くて好きだったなぁ。…ごめんね、松村君きっと辛かったよね」



しゅん、とする。

失敗しちゃったなぁ。


「いや、俺もポスターを見て興味を持ったからな、蜂山さんに責任はないよ。…初めてこんな見慣れてない程のグロい物を見たからこうなってるだけで、すぐ治る」



優しいな…ちゃんとフォローも入れてくれるんだね。

私は松村君に水を渡し、背中をさする。優しく、ゆっくりと赤子の髪を撫でる様に手を動かす。少しでも、気持ち悪さを和らげることができたら…良いんだけど。



_この時、彼の耳が少し赤くなっていたような気がした。




5分程、椅子に座っていた松村君は回復したのか、スッと立ち上がる。「ありがとう、元気が出た…次はどこに行くんだ?」と言いながら。



私は、ぱあと明るくなる。

普通に嬉しかった。まだ遊んでくれるんだ、まだ私のプランを頼ってくれるんだということに。



…張り切っていこ!!

松村君ガイドのミチカ復活!!








「次はカラオケに行こーと思ってるんだけど」





「カラオケ…俺あまり歌った事がないんだが、いいか」



カラオケに移動している最中、不意に松村君が私に問いかける様に言った。

今日の松村君ほんとにどうしたの、なんか暗くない?



「私だってそんなガチで歌う訳じゃないし、大丈夫だってば〜!」


ね、とまるで弟を元気づける姉かのように対応をすれば、私は手をグッと握り応援のポーズをとる。

いつもなら立場が逆で私が色々びっくりさせられる側だから、ちょっと慣れないな。

もしかしたら、彼は同性以外の友達と一緒に遊んだりとかそういう経験があまり無くて、緊張しているのかも。よし、なら私がリードしてあげなければ!



「そうか、」


ナビが到着しました、と話す。

渋谷はカラオケがたくさんあるし、歩いているだけで何軒かポツポツと見えるだろう。けれど、私は方向音痴だし松村君を連れて迷ったりとかそんなダサい事できないからね!



「うん!あ、ここみたい。行こ!」



私たちはビルの中にあるチョイトサウンドという所に直行した。

カラオケ、ってビルの前の看板に書いてあるしここであってるハズ…。



「最近のカラオケはビルの中にもあるんだな」


松村君は本当に何も知らないのか感心したように店内を見る。結構昔からあるよ、って教えてあげたい…。でも教えたらプライド傷ついちゃうかな。


「…三時間コースでいい?800円ぐらい」


「ああ」



そして、渡された部屋の番号は16号室、やったドリンクバーに1番近い席じゃん。









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