田中との約束を断る私、また約束をする。
「で、どうしてスマホ奪ったの?何で先生あんな、なよなよなの?」
私は家庭科の時間黙々と刺繍をしている彼に声をかけた。
もう、終わってそうだし良いよね?聞いても。
「前に、担任が……ちょっと引くかもしれないが君をつけているのをみてもしかしたらと思い、奪いたかったんだ。予想通り、盗撮されたものが沢山あった。」
「…先生が?!てことは私のストーカーの一人だったって事?」
気持ち悪!
先生は大きいからきっと襲われたりしたら…私。
鳥肌が止まんない。
「でも、大丈夫だ。あいつ二度と蜂山さんに手は出さないって言ったから」
「言わせた?」
「……」
無言になっちゃった。
言わせたんだ……。
「でも、助けてくれたって事だよね。ありがと松村君。……ところで明日暇?」
私はふっと笑いながら言う。
「暇じゃない」
「何か予定はあるの?」
「何もない」
「じゃあ…暇だね。一緒に遊ぼ?」
何もないなら暇じゃん。んもー遠回しに私の誘いを断ろうとしないでよー。
私は松村君をツンツンとつついた。
「遊ぶといっても何故?君には俺以外にも遊べる友達がいるだろ」
「その遊べる友達より松村君と遊びたいの!…まあ、一応他の理由もあるんだけど」
ひーつれないヤツ。
そこまで私と遊びたくないのかなと内気に思ったけど、いや絶対に遊んでやるという気持ちも燃えてきた。
「他の理由?」
「明日、須月ちゃんと田中と遊ぼーって言われたんだけど流石に行くのはヤバいかなって思って断った時、他に予定あるからって言っちゃったんだよね。だから遊ぼう!松村君」
田中の下へ単独で行ったりしたら何されるか分からないし、だからといって松村君を連れて行くのはおかしい事になる。もう、きっぱり断ってやった!!須月は凄い残念そうな顔してたけど当たり前の事なんだよね。
遊ぶ相手なんて居ないし、誘いたい相手は…私の花を捨てた委員長とか絶対に何があってもやだし!。とか考えてたらこれもしかして松村君の壁を壊せるいいチャンスじゃない?!って気づいた。前々から松村君には少し誰に対しても距離があるように感じたから、どのみち遊ぶつもりだったし。
断られても絶対連れて行くよ!!
「…分かった。」
「え!ほんとっ!!やった!!」
断られなかった…!
嬉しい〜、遊んでくれるんだ。私は脳内でがっつぽーずをする。
「じゃあ、明日9時にハチ公前に来てね」
「ああ、頑張る」
「…遅刻すなよ!」
「ああ、頑張る」
松村君は頑張るbotとなってしまった。
_朝9時私はハチ公前で立っていた。
この場所のこの時間はやっぱり同じ様に待ち合わせ場所にしている人が多くばりばりに混み合っていた。こんな人がごちゃごちゃの状態で松村君見つけられるかな。
“ついた“
私はそう、メールで送る。
一応10分前には着いていたんだけど、早く来たとか言ってしまったらまだ予定の時間でも無いのに松村君が焦ってしまう可能性がある。彼ならないかもしれないけれど!!
すると“俺も今着いた“と返信が返ってきた。
おや?と思い周りを見渡したけど、やはり松村君らしき姿は無かった。また、人混みで探しにくいと言うのも見つからない一つの理由だろう。もし、松村君が黄色と青の服をきていたらすぐ見つけられたろうに…隣には…ちょっと、立ちたくないけど。
“何色の服着てる?“
“黒“
良かった黒か〜〜。
まあまあ見つけやすい色で助かる。白はお洒落だけど今日は白を着ている人が多いから多分私見つけらんないよ。黒ならパーカーとかにジーパンとか着てるかな?
“あ、見つけた“
彼からそんなLINEが来た。
え、どこどこどこ。私は当たりをきょろっきょろっ、と見渡す。首が痛くなるほど探したけど居ない。蜂山さん、と声がうっすら後ろらへんから聞こえる。勘でそっちの方向を向くが、まだ見えなかった。…くぅ、こういう時身長が私にもっとあったら華麗に素早く見つけることが出来たのに。ごめんよ松村君〜〜!私は俯いた。
「蜂山さん、だよね」
ふいに、さっきの声が今度はクリアに、近く聞こえる。
私は顔を上げてみると、彼はスマホを片手に私の目の前に立っていた。
「…よく、見つけたね。私全然見つかんなかったよ」
ちょっと嬉しかった。
なんか、こんな人が居る中ですぐ見つけてくれた事。
「何故か分からないけど、一目みてすぐ分かった…」
「結構私ってわかりやすいのかな………えへ」
ちょっと自分でも何言ってるのか分からない。
松村君も矛盾してて何言ってるかわからない。
ただ、私がえへと照れるまで、二人の静かな時間が流れた。
気まずくて、恥ずかしい時間が。
「よ、よし!行こう今日はカラオケ行ってゲーセン行ってご飯食べて映画みて遊び尽くすんだから!!!松村君お金の準備は大丈夫?!」
「あ、ああっ」
あのいつも冷静で落ち着いている松村君は今日は私のペースに絆されたのかテンパっているように見えた。
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