松村君から課せられた任務、ちょいムズ?

先生にまで冤罪をかけられてるんだ松村君。

あーもう、誰が計画して誰が広めたの?田中いれて良く遊んでる四人って事は、あのイメージしかない。委員長と藤田と須月だ。須月以外の三人苦手なんだよね、なんかいつも他責だし、うるさい。




さて、そろそろ松村君からLINEきたかな。


…まだかぁ。


松村君の言った夜って言ったってどれぐらいの夜か分からない。家に帰ってからすぐかもしれないし、深夜かもしれない。ずっっっとスマホの通知画面を見てる。お風呂入ってる時も見てたりして。


ふふ、なんかこの感じ懐かしいなぁ、中学校の時好きな人とLINEしていた時もこんな感じで返信が待ちどおしかったんだよね。今は待ちどおしいとはちょっと違う気もするけど…。


ピコン、スマホがなった。

またDMきたのかな〜とか思って電源ボタンを押すと松村君だった。


きた!!!


“起きてるか?“


“おきてる“


…あの今まだ8時だし、そんな早寝タイプじゃないよ私。



“それで協力して欲しい事ってなにー?“


“担任のスマホを奪いたい“


わお、超単刀直入。

あのごつい担任から奪うなんて、できるかな。


“ええ、難しいね〜スマホをかばんから取るって事?“


“…そうだ、あいつはスマホを2台持っているが、青ではなく赤の方を奪って欲しい“


“わかった〜でもなんでスマホを?“


“…成功したら、で良いか?“


“うん“


えーーモヤっとする。隠し事でもされてる気分だ。

先生がスマホを2台持ってるのは私も知ってる。青は仕事用で良く使っているのは見るけど、赤は見た事がない。みんなは趣味用スマホって言ってる。噂によるとあれで好きな女優のインスタとか見てるらしい。うげ〜。


“友達たちと話しながら、担任の方へ近づいてって6対1ぐらいで友達が話し始めた時、こっそり奪ってみる“


“ああ、頼む“


へへ、頼まれちゃった。みちか頑張っちゃうぞ!

バレたら結構やばい事してるけど、これも真犯人を見つけるためっぽいからね。

先生の信頼を失うといった少しの犠牲ぐらい、どうって事ないよ。


“じゃあ、おやすみ“


“おやすみ“


そう言ってLINEを閉じる。

えなんか、ちょっと今、楽しいかも。





「ミチカ、おはよう」


「みっちゃんおはよ」


須月ちゃんと去年仲良くなった池崎ちゃんが声をかけてきた。そうだ!池崎ちゃんなら、もしかしたら松村君の事を信じてるかもしれない!!そんな淡い期待を抱いて挨拶を返す。


「おはよ」


「ねえ、みっちゃん昨日大丈夫だった?何もされてない?」




二人がぐいっと私に近づいてくる。あれ、ダメでした、優しそうなこの子でさえ疑ってる一人だ。待って本当にこのクラス信じている人とか居ないの?

 



「何もされてない、これまでも、誰にも何っにもされてない」

 

「ホンマか?今日の朝あんたの机の上に花置かれとったで」


「え、嬉しい」




お花が置かれた?わたしにもファンがいるものだなぁ…嬉しい、誰からだろ。

あれかな、ホワイトデーのお返しでくれたのかな?!もう、対面で渡してくれたら良いのに!


すると須月ちゃんが呆れた様子で私をじと、と見る。




「アホか、お花が置かれてるって事は死ねってことと同じやで」


ツッコミされちゃった。そんな事はないやろ。

そんな死ねって言う為だけにお花を買ってくる人とか可愛すぎるでしょ。


「で、お花はどこ?」


「委員長がゴミ箱にすててたよ」


「…サイテーじゃん」


委員長はこちらをチラチラと見てきたが、嫌な視線。

褒められたり、ありがとうとか言って欲しかったのかな。微塵もそんな気持ちないけどね!!


ー担任が教室へ入ってきた。


そろそろ計画実行しなきゃ!!スパイみたいな事考えてる、今の私なら何でもできる気がしてきた。不意に松村君と目があったのでウインクをしておいた。返ってこなかった。



基本、私が話していたら周りに皆が来てくれるので、まずは先生に声をかけようと思う。

先生が教卓についた時、私も先生の前へ移動する。すると、須月ちゃんも池崎ちゃんも周りに寄ってきて先生を囲う様な形になった。須月ちゃんが来た後もぞろぞろと集まってきて、最終的には七人集まってきた。私を入れたら八人だ。


「先生髪の毛切ったやんな〜〜?」



須月ちゃんがたわいのない話を始めてくれた。先生もそれに集中している。

多分、今ならこそっと取ってもバレない。幸いなことにバッグは皆の囲いの外側にあるため簡単に取る事ができるでしょう!!


私はこっそり円の中から抜け出し、バックの中を見る。

うわ!1番上に赤いスマホあるんじゃん!!


これはラッキーすぎるでしょ…

私はひょい、とスマホを取りポッケの中に入れた。


よし、成功だ。



任務が終わった私は、あの囲いの中に入るのがめんどくさくなってきたからすぐ椅子に戻った。


そして私は素早く、自分のスマホを起動する。


“松村君ゲットしたよ“



“ナイス。今渡せるか?“



“いける、誰も見てない“



私たち二人が会話しているところを見られると周りから異常な程に心配されるのでLINEで話すことにした。いやあ、今の時代って便利だなぁ!


すっと、私は腕を下に下げ、赤いスマホを松村君へと渡す。


“これで協力して欲しい事は終わり?“


“ああ。一旦終わりだ“


“わかった“



〜〜




次の日、先生はいつもよりカッカしていた。


些細な事でキレたり、人がスマホを触っているだけで怒ってくるようになった。


授業中はいつもなら絶対に私を当てるのに、今日は当ててこない。

それどころか目も合わせようとしない。何なの今日先生おかしいよ。


「せんせ〜…」


私は声をかけてみた。


「な、な、なんですか?!」


あれ、先生って私に敬語を使うような人だっけ?もっと威圧的な感じだった気がしたけど。

他の生徒にはダメなのに。


「なんかあったの?」


別に知りたくなんか無いけど、何かおかしい。


「なんかなんて、なにも無いですから!!!」


いや、絶対何かあるでしょ。日本語がバグっちゃってる。

先生はカッカしていると思っていたけど、今はナヨナヨしてる。





…ねえ、もしかして昨日のスマホ使って松村君やばい事したんじゃ。




ー今日の松村君は先生と相対する様に少しご機嫌だった。

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