⑦正妻戦争編

「僕くん。教科書忘れちゃったから見せてもらってもいいでござるかな♡」

「許可を得る前に机をくっつけるアサシンちゃんの図々しさ」

「むぅ! 僕くん!」

「何だい幼馴染ちゃん?」

「正妻と側室の区別がついてれば二人くらいまでならいいよ」

「意外と男女関係の価値観がおおらかだった」


~ ~ ~


「僕くん僕くん」

「はいはい、幼馴染ちゃん」

「僕くんの左腕に引っ付いてる迷惑な地縛霊、焼き殺してもいいかな?」

「すりすり、すりすり♡」

「焼き殺すのは良くないよ、幼馴染ちゃん」

「えー!」

「校舎に燃え移っちゃうからね」

「ツッコミどころそこでござるか!?」


~ ~ ~


「あ~~~~!」

「この打てば響くような」

「地平線の向こうに届くような!」

「鼓膜を破りかねないような」

「他人の恋人を奪おうとする泥棒猫のような!」

「比喩表現リレーしてないでさっさとあたしのターンにしなさいよ!」


~ ~ ~


「あたしの僕くんにくっつきまわる影みたいな陰気臭いこの女何なのよ!」

「某は僕殿の未来の第一側妃でござる♡」

「ござる、じゃないわよ! あたしが僕の第一側妃なんだからね!」

「二人ともすっかりその立場を受けいれてるんだね」

「ふあ~、ねむねむ……」

「一応恋敵の二人が火花散らしてるのに幼馴染ちゃんは余裕そうだね?」

「負け犬がいくら吠えても虚しいとしか思わないよ?」

「辛辣。これが正妻のゆとりなのか」


~ ~ ~


「第一回、僕クイーズ」

「「「イエーイ!」」」

「第一問。僕の好きな食べ物は?」

「卵焼き!」

「すぱげてぃでござる!」

「僕ママが作るガパオライスご飯大盛り肉そぼろマシマシパプリカ少なめ目玉焼き(ターンオーバー気味)三つ乗せ」

「第二問。僕が一番大切にしている物は?」

「愛情!」

「某♡」

「話の落ち」

「「いくら何でも幼馴染ちゃんが有利すぎる!?」」


~ ~ ~


「二人とも私を誰だと思ってるの? 幼馴染だよ! えへん!」

「珍しく幼馴染っていうアドバンテージを活かせたね、幼馴染ちゃん」

「あ、あたし、胸のサイズには自信が――」

「ぼいん!」

「そ、某は知謀ならば――」

「学年首席!」

「なけなしのストロングポイントすら吐息一つで一蹴する幼馴染ちゃんまじで残酷だなあ」


~ ~ ~


「こ、こうなったら二対一よ! 気に入らないけど手を組むわよ、アサシンちゃん!」

「背に腹は変えられぬ! 了承した、ツンデレちゃん!」

「前門のツンデレちゃん、後門のアサシンちゃん。さすがの幼馴染ちゃんも挟み撃ちには――」

「ぴょーん」

「ひゃう!」

「あふぅ!」

「ピース♪」

「こんな絵に描いたような自滅劇ってある?」


~ ~ ~


「ふんす! ふんす!」

「投げたフリスビーをくわえて戻ってきた飼い犬みたいな目で幼馴染ちゃんがこちらを見ている」

「褒めて褒めて~!」

「よーし褒めるぞ」

「わ~い!」

「艶々の髪の毛が手触り良い表情豊かで見てて楽しい声が良く通るから気持ちがいい華奢だけど柔らかい身体は抱き心地がいい柑橘類みたいないい匂いがする僕のこと好きすぎるところが愛しいお腹の音がユニークで退屈しない求婚してくるくせにちょっと目を見つめると五秒で目を逸らしちゃうところ可愛い」

「……っ」

「幼馴染ちゃんって……」

「可愛いのが一番卑怯でござる……」


~ ~ ~


「今日はみんなと遊べて楽しかったね、幼馴染ちゃん」

「……僕くん」

「どうしたの? お腹減った?」

「それはまだ耐えられるの、五分くらいは」

「至急買い物を済ませて帰宅しないと」

「……」

「幼馴染ちゃん?」

「あんまりね、私以外の女の子と、楽しそうにするの、やだなあ、って」

「はは」

「どうして急に撫でるのぉ!?」

「やっぱり僕の幼馴染ちゃんは一番可愛い」

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