⑥刺客襲来編

「今日もいい天気♪」

「幼馴染ちゃん。強がってないで傘さして歩こ?」

「もらった!」

「うわっ、お、幼馴染ちゃん!」

「……」

「反応がない……そんな、死んで……」

「肩軽くなったー!」

「某(それがし)の手裏剣を鍼治療代わりにするなぁ!」


~ ~ ~


「手裏剣に黒装束。そして幼馴染ちゃんを死角から狙う振る舞い、まさか」

「そうだ! ここで会ったが百年目! 今こそお命ちょうだいする!」

「うぅ」

「ふっ。さすがの幼馴染ちゃんも某の強襲に恐れおののいて――」

「僕くん、知らない人に話しかけられて怖いよぉ!」

「と、恐怖感を利用して僕の同情心を誘い合法的にハグするムーブに移行する幼馴染ちゃんだった」

「某をイチャイチャに利用しないでほしいでござる!」


~ ~ ~


「それでそれで、あなたはだーれ?」

「某だよ、某!」

「レガシーさん?」

「それじゃ遺産になっちゃうよ。サッカー選手がソックスに入れる、ほら」

「レガース!」

「そうそう」

「どっちもちがーう! アサシンちゃんでござる、アサシンちゃん!」

「だってさ、僕くん!」

「そこはかとなくツンデレちゃんと立ち位置が重なる匂いがする」


~ ~ ~


「アサシンちゃん。昨日世界を救ったばかりの幼馴染ちゃんが狙われる理由はないはずだよ」

「ばしゃ~、ばしゃ~♪」

「ほら見てご覧、長靴を履いて水たまりで遊ぶくらい純粋な幼馴染ちゃんに恨みを抱く人なんているはずが――」

「……その幼馴染ちゃんのずさんな現場対応のせいで自宅が半壊したのでござるが!?」

「幼馴染ちゃん、生まれ変わってもまた遊ぼうね」

「急に手のひら返された!?」


~ ~ ~


「さっさとヨクバリスを撃退してくれていれば某だって、某だって……うぅ……」

「めっちゃ時間稼ぎしたから、その間放置してたヨクバリスがアサシンちゃんの家を壊しちゃったのか」

「アサシンちゃん……」

「泣き崩れるアサシンちゃんに歩み寄る幼馴染ちゃん」

「上を向いて歩こう?」

「今世紀最大の『おまいう』が飛び出しましたとさ」


~ ~ ~


「今日という今日は許せんでござる! いつもいつも某の邪魔ばかりして!」

「これまでどんな嫌がらせしてきたの、幼馴染ちゃん……」

「ある時は麻薬密売組織の護衛を任された某を振り切り商談の場を破壊したり!」

「ふんふん」

「またある時は世界サミットに参加する要人暗殺の仕事を邪魔したり!」

「うん?」

「そしてある時は某が手引きした密入国船を沈没させてみたり!」

「幼馴染ちゃん単なるヒーローじゃん」

「でへへ♪」


~ ~ ~


「結論。アサシンちゃんが悪い」

「そうやっていつもいつも人間は幼馴染ちゃんの味方ばかりするんだ!」

「そりゃ犯罪者と幼馴染ちゃんだったら幼馴染ちゃんを選ぶよ。それに」

「うゆ?」

「な、なんでござるか、じっと見て」

「大は小を兼ねるとも言うしね?」

「もー、僕くんのえっちぃ♡」

「何故だろう、某の尊厳が傷付けられた気がして今無性に僕くんを殴り飛ばしたい」


~ ~ ~


「ええいとにかく最早怒り収まらんでござる!」

「アサシンちゃん!」

「いつになく幼馴染ちゃんが真剣だ」

「な、なんだ。今更謝ったって遅いんだもん!」

「ううん、そうじゃなくて」

「命乞いか? はは、それこそ通らぬでござる!」

「雨に濡れてお洋服透けてるよ?」

「ひぁん!?」

「威厳を損ねる生娘みたいな悲鳴出ちゃった」


~ ~ ~


「嫁入り前なのにどこの馬の骨ともわからない男の子に裸見られたあ!」

「僕としては忍び装束がシースルーだったことが衝撃なんだけど」

「安心してアサシンちゃん! 僕くんは私と結婚するからアサシンちゃんの裸なんかいくら見てもなんとも思わないんだよ!」

「無価値な身体って言われた……ふぇぇん……っ」

「無慈悲無自覚にとどめを刺す幼馴染ちゃんってほんと残酷」


~ ~ ~


「びええええん! びえええええん!」

「うーん、しょうがないっか」

「観念したような顔してどうしたの、幼馴染ちゃん?」

「うるさいから黙らせようかなーって」

「結論は悪くないんだけれどその右手に吹き溜まるブラックホールみたいな禍々しい球体は絶対に良くないと思うからしまおうか」

「だいじょぶ! 殺人はバレなきゃ無罪だから!」

「たしかになあ」

「いやそこは止めてほしいでござるが!?」


~ ~ ~


「はぁ。しょうがないなあ」

「僕くん?」

「これ、着てよ」

「ふぇ……」

「ぶかぶかのブレザーだけど、何もないよりはいいと思うから」

「取るに足らない虫未満の敵にまで情けをかける僕くん素敵すぎ~♡」

「僕への過大評価と敵に対する情け容赦なさがびっくりするよ、幼馴染ちゃん」

「……生まれて初めて、男の子に優しくされちゃった……♡」


~ ~ ~


「よーし朝のHR始めるぞー、注目しろ、思春期症候群ども」

「今日も行き遅れ三十路先生の気怠げな声が虚しく響く」

「すぴすぴ、にゅふふ♪」

「今日は転入生を紹介するぞー、入れ」

「幼馴染ちゃん、転入生だって、起きて起きて」

「堅気になるだあ? せやったら上納金五本収めんのが通例やろがオイ!」

「それは掟ね。というかどんな夢見てるのさ、幼馴染ちゃん」

「……は、初めまして。アサシンちゃんと申すでござる、ます!」

「アサシンちゃんは両親のお仕事の都合で世界各地を転々としてるらしい。お前ら仲良くしろよ」

「僕くん、よろしくでござるね……♡」

「むくり。甘ったるい泥棒猫の匂いがする」

「どうやら僕の学校生活、ちょっと面倒になりそうだ」


~ ~ ~



 ……全体的に長くなってしまった。

 もっとテンポを意識して書けるようになりたい。

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