③お昼休み編

「おっべんと、おっべんと、うっれしぃっなぁ~♪」

「幼馴染ちゃんはいつも美味しそうに食べるから作りがいがあるよね」

「えへへ、それほどでも~♪」

「では、本日も実食のほど、お願いします」

「――なるほどこの厚焼き玉子は普段使う上白糖ではなくあえてグラニュー糖を用いることでしなやかな甘さを演出してメリハリを付けているのだね、セボン」

「ソムリエ顔負けの渾身の食レポが凄すぎる」


          ~ ~ ~


「はい、あーん」

「あ~ん♪」

「……」

「どうしたのツンデレちゃん、仲間はずれにされて泣いてる?」

「やかましいわよ! ただ、よくもまあ飽きずに毎日毎日餌やりできるわねと思っただけだわ!」

「やってみればわかるよ、はい」

「はいって渡されても……」

「あ~ん」

「こんなの……」

「ん~~~おいひぃ~~☆」

「……もう一口食べさせてみてもいい?」

「餌付け中の幼馴染ちゃんは普段の五割増しで人懐っこいんだよねぇ」


          ~ ~ ~


「すぅ、すぅ」

「寝ている。野生動物も驚く本能に忠実っぷりだ」

「んふふ♪ 僕くん」

「やれやれ。夢の中でまで僕は幼馴染ちゃんのお世話係かな」

「お腹減った!」

「指かじるのやめて! 世話係じゃなくて食料だった!」


         ~ ~ ~


「むにゃむにゃ」

「起きた? ほら、お茶飲んで、ゲップして、幼馴染ちゃん」

「まるでおっきな赤ちゃんね、世話が焼けるわ」

「そしたら僕はお父さんかー」

「あ……じゃあ、私は……」

「ツンデレちゃんは親戚のおばちゃんだねー」

「わかってたわよそんな甘い展開にならないってことはね!」


        ~ ~ ~



「……何してるの?」

「幼馴染ちゃんが二度寝したから起こさないように息を殺してる」

「そんな封印された悪魔じゃあるまいし、ちょっとやそっとの物音くらいどうってことは――」

「あ、わるい! ボールそっち行ったぞ!」

「……悠久なる我の眠りを妨げし凡骨は誰ぞ」

「終末の魔女、無事起床しちゃったね☆」

「笑ってる場合じゃないわよ早く止めてよ空がどす黒く染まってるわよねぇ!!」


       ~ ~ ~



「おはよう、幼馴染ちゃん」

「……んゆ。良く寝た~! んん~、THE・快・眠☆」

「ご機嫌そうで何よりだよ、幼馴染ちゃん」

「ところで二人とも、なんでそんなワイルドな格好してるのー?」

「あんたのせいよ、あんたの!」


      ~ ~ ~


『はぁ。あたしって、本当にバカね』

「そう言ってツンデレちゃんは可愛らしい花柄のランチクロスに入ったままの手付かずのお弁当に目をやった」

『わかってたのに。僕くんは幼馴染ちゃんに夢中だって』

「そうやって自分に言い聞かせるように呟いて、ツンデレちゃんは幼馴染ちゃんの隣を歩く僕くんの背中を眺めるのだった」

「二人して妙なナレーション入れるのやめてくれる!?」



      ~ ~ ~


「それ、要らないならちょーだい!」

「出た、幼馴染ちゃんの空気を読まない暴食魔人っぷり」

「……いいわよ、どうせ誰も食べないんだし」

「可愛いね。僕くんのとは違って、女の子っぽい、カラフルなお弁当だ~!」

「……」

「あむあむ、おいひぃ♪」

「はぁ。あたしって、本当にバカね、ふふ♪」

「今日も美少女二人の触れ合いが尊い」

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