気ままビリヤードホラー小説 全二回 ”球八つ”

 シンスケの学校はふるい。まあこんな山奥の生徒が10人もいない学校ではしょうがないが、それにしても築80年はないだろう。Q県の山奥の小さな集落、人口300人、そんなへんぴな村の学校は生徒10人、先生3人、シンスケは5年生だ。みょうなうわさはもうみんな夏休みをそろそろやり始めないといかんぞ、という8月の下旬に流れだした。夜中、球をつく音がきこえる、というのだ。シンスケの学校は古いわりにでかい。昔は戦争でけがをした兵のための保養所だったらしい。そのためか娯楽として今でもビリヤード室がある。先代校長もビリヤード好きもあって、どうせ生徒は足りないほどだからいいだろうといってのこしておいたらしい。そのビリヤード室で最近、球を打つ音がきこえるのだそうだ。しかも必ず8球ポケットした音とともにその音が止むらしい。一体だれが…、


 その幽霊かただの人か、とにかくこの目で確かめてやろうじゃないか、シンスケは決意した。かい中でん灯とおじいちゃんのおまもりをもって夜中シンスケは家を出た。


 夜の学校はしずまりかえり、シンスケはいっしゅん、もう帰ろうか、と思った。しかし好奇心と俺ゆうれい見たぜ、という名誉心が彼をビリヤード室に向かわせた。


 カツーン、はじまった。ボールを打つ音だ。それにつづいてカポッと球がポケットに入る音がシンスケをやさしくひびかせた。一体だれだ?


 かいだんを上がっていくときに同じように4回音がなった。あと3回か、それにしてもなぜ八つの球なんだろう。フツービリヤードといえばナインだろ。シンスケは昔ハスラーだったおじいさんによく話をきいたものだ。


 カツーン、6回目だあと2個、あのつきあたりの部屋がビリヤード室だ。窓からそっとみてみる。灯りはついてない。しかしぼうっと白い人影が見える。先代校長だ!しかし彼は1年前に死んだはずでは…


つづく

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