第5話 危うく命のかけどころを間違えそうだった話

 まだ会社の若手だけの飲み会が自由にできていた頃の話

2次会も終わり、どうしようかと集まった掛◯駅前、街はお祭りで活気づいていた

同期入社のHが腕まくりをして何か喚いている

「俺これから喧嘩するかもしれない。何もしていないのにウルサイと言われた」と興奮している

Hが興奮するなんて珍しいなぁと思っていた

それを聞いていた先輩2人が急激に熱くなる

1人目は見かけより短気なMさんで戦闘モード。2人目がサンダーさん。1秒で熱くなる。この人は吉◯工業高校時代、喧嘩をするときは必ず相手の頭を踏み潰して二度と歯向かうことのないようにしていたと言っていた。ニックネームがサンダーさん、間違いなくやばい人

こちらは俺を含めて4人、もしかするともう1人いたかもしれないが記憶が薄い。相手は地元掛◯のヤンキー、こちらと同じ位の人数。2つに分かれて口でいがみ合い、一触即発。俺もそれなりの態度をとった

 なんやかんやあったがその場は一旦散開。

その後、Hと2人で掛◯駅で切符を買っていると何やら後から人がいっぱい来ていた

 さっきのヤンキーに仲間たちが追加され、えらい人数、20人ぐらいに囲まれていた。

2対20って、これが漫画だったら「いっちょう大暴れしますか」と大乱闘でしょうが、現実世界の2対20の戦力差は頭の中にウォーニング点灯

俺は切り抜けなければならないと思い、意識を切り替え「まあ、お互い悪かったんだから引こう」というようなことを相手の1番興奮してる奴に言った。

そうしたら「関係ない奴は黙っていろ」と言われた。俺は関係ない奴なのかと意外に感じた。

 やはりこのヤンキーはHの態度に我慢がならないみたいだ、その気持ちには普段の俺も共感するところがある

そして結局、Hが「ごめんな.悪かった」みたいなことを言って、詫びを入れ、その場を切り抜け列車に乗った


このときの発端になった真相をいろんなデータと証言から構築すると次のようになる


 まずそこにいたのがヤンキーの女の子、どんな事情かはわからないが泣いていた。それをまたヤンキーの男が義憤に駆られてか慰めていた


そこへ我らがHの登場。駅前を鼻歌を歌いながら歩いていた。曲はわからないがあの濁った声での歌。人の琴線には触れないが、逆鱗には触れるということであろう

そこで飛んできた言葉が「ウルサイ」

そして、この多人数を巻き込んでの発火状態

この騒乱の中で1番悪い奴は誰かと言われれば

・・・言わないでおこう


もっと手の速いヤンキーだったら確実に大乱闘。理由のしょぼさが大乱闘を避けられた要因かもしれない。でも、群衆心理をなめちゃいけない、理由は何処かに飛んでしまうものだ。

興奮が興奮を呼び2対20の生死をかけた戦いになってもおかしくない状況だった

もしそうなったのであれば、俺は何に命をかけて戦ったのだろうか

命をかけなくてよかった



 群衆が興奮すると、とんでもないことになる。おかしな興奮が支配した瞬間は気をつけたほうがいい


掛◯駅前の騒乱の思い出


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