人間の「欲」の深淵を描く

ジャンルとしては「異能力バトルもの」であり「現代ファンタジー」になる本作。
特徴的なのは蠅の姿に異形化してしまった人間、すなわち「蠅人間」同士の戦いが描かれていること。
蠅人間はそれぞれ個体ごとに容姿や能力が異なり、異能力バトルが展開されるが、蠅人間ごとに豊かな個性が描かれており、バトルものとして読んでも楽しい。

だがさらに本作の特筆すべき点は「欲」に呑まれてしまった者が蠅人間になるという設定。
約二十話時点でのレビューになるが、蠅人間化する登場人物の背景に踏み込む描写がある。
当然人によって「欲」の形は異なるはずで、彼ら彼女らにとっての「欲」とは何だったのか、さらにその「欲」に繋がった「愛」や「怨嗟」が何であったかを深く考えさせられる。
特にトランスジェンダーの荒井の「苦悩」には惹き付けられた。

まだまだ明かされていない謎を秘めながら軽妙な文体とテンポの良さで進んでいくストーリー。
その深みをご一緒に追いかけてみませんか?