第6話 ロボットオタクは、虹の彼方に

 空の色は、だいたい一時間ごとに変わっていくようだ。

 青から緑色へ、次は黄色になって、さらに橙色へ。

 こうして計算してみると、三時間くらいカラスに乗っていることになる。

 でも、オレが約十五分ごとに休憩を要求したので、乗っている時間はもっと少ないと思う。

 体感だから、正確な時間じゃないけど。

 それにしても、時計がないって不便だな。


「本当なら、もっと早く着けるのにっ!」


 何度目かの休憩の時、ツィーがぶつくさ言った。

 オレはカラス酔いでぐんにゃりしながら、ツィーに言い返す。


「そんなこと言ったって、乗り心地最悪なんだぞっ」


「そうですか? 乗り慣れれば、結構楽しいと思いますけど」


 にっこりと優しく微笑むデューに、オレはため息交じりで返す。


「今のところ、オレにはちょっとそうだ」


「まぁ、あたしの友達にも、苦手だって子もいるけどね」


 くすくすと苦笑しながら、フェーが言った。

 きっとその子も、オレと同じで、三半規管さんはんきかんが弱いのだろう。


「ほらっ、あともう少しだから、頑張って!」


「う、うん」


 フェーに手を引っ張られて再びカラスに乗せられると、巨大な山に開けられた長いトンネルを抜ける。

 視界が開けると、明らかに今までとは違う場所が見えてくる。

 あれが、巨人の国に違いない。


 トンネルを抜けると、さらに山を登って頂上を目指す。

 頂上へ辿り着くと、フェーとツィーはカラスを止めた。

 オレは不思議に思って、首を傾げる。


「あれ? 行かないの?」


「これ以上近づくと危ないから、ここまでね」


「危ない? 何が?」


 首を傾げるオレに、ツィーが下を指差す。


「見れば、分かるわよ」


 フェー達がカラスから降りたので、オレも降りて、言われた通り下界を眺めた。

 妖精の国が農村だと例えるなら、巨人の国は近代都市のような感じだ。

 地面も土ではなく、コンクリートのようなもので、塗り固められているようだ。


『おおおおおおおおおお~っ!』


 突然、たくさんの雄叫びのような声が聞こえて、反射的にびくりと肩を揺らす。


「な、何?」


「何故か分かりませんが、いつも戦っているらしいんです。まるで、争ってないとダメみたいに。何で、同族同士で争うのでしょう?」


 デューの悲しげな呟きを、オレはほとんど聞き流していた。

 目の前の光景に、心を奪われてしまっていたからだ。


 たくさんの巨大ロボットが、戦っている。

 アニメや特撮で見たことのある、金属製の巨大ロボット。

 でも、「機動戦士○ンダム」や「新世紀エ○ァンゲリヲン」のような、カッコイイデザインのロボットではない。

「○ンダム」に出てくる「○ク」みたいな、地味なロボットばかりだ。

 はたまた「装甲騎兵ボト○ズ」に出てくる「アーマード・トルーパー(略して、AT)」っぽい感じ。


 色も自衛隊みたいな、深緑色や黒っぽい茶色や灰色といった暗色系。

 思い出してみれば、ハデな配色の戦車や装甲車は見たことがない。

 まぁ、ロボットは、戦争の道具だからな。

 当然といえば、当然なのかもしれない。


 真っ赤な夕日に照らし出される、巨大ロボットの軍団。

 ズシーンズシーンと、腹に響く足音。

 あちこちで、サーベルやアックスを持った巨大ロボットが、互いに切り合う。

 ガシャーンズガーンと、耳をつんざく激しい鉄と鉄のぶつかり合い。

 ロボットが倒れた衝撃で、ズズーンと大きく振動する大地。


 まるで、ロボット大戦そのものだ!

 まさか本当にこんなことが、目の前で繰り広げられているなんてっ!

 オレは本物の巨大ロボット戦争に驚き、恐怖しながらも、興奮していた。

 ゲームやアニメの中では、ロボット大戦なんてものがあるけれど、それってやっぱりゲームやアニメだからなんだ。

 そうじゃないと、おかしいと思っていた。

 巨大ロボット戦争の実現なんて、到底不可能だと思っていた。


 それにしても、「ロボット」に「妖精」って、「聖戦士ダンバ○ン」か、はたまた「重戦士エルガ○ム」かよ?

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